科学と技術

世界の見え方を根本から変えてしまった歴史的発見の「ダイアグラム」いろいろ


ひとつの発見が、人類にとっての世界のあり方を大きく変えてしまうことが、歴史上これまで何度もありました。紀元前4世紀頃に作られたロゼッタ・ストーンから世界初マイクロプロセッサの設計図まで人類史に燦然と輝く発見をしたためた図表やグラフ、イラスト等のダイアグラムです。

1. ロゼッタ・ストーン:Rosetta Stone(紀元前196年)

1799年にエジプト・ロゼッタで発見されたロゼッタ・ストーンは、紀元前3200年〜紀元前4世紀頃まで石碑などに刻む正式な文字とて使用され、その後読み方がわからなくなっていた「ヒエログリフ」を解読する鍵となった石碑です。

紀元前196年にファラオ・プトレマイオス5世のために出された勅命が、ヒエログリフ(古代エジプトの聖刻文字)とデモティック(古代エジプトの民衆文字)、そしてギリシア文字の3つの文字で記述されていたことにより、フランスのジャン=フランソワ・シャンポリオンにより1822年に解読されています。その後も研究が進み現代では比較的簡単に読むことができる文字となっています。

2. プトレマイオスの天動説:The Ptolemaic System(140〜150年頃)

ポルトガルの宇宙地理学者・地図製作者バルトロメウ・ヴェーリョが、ポルトガル王・セバスティアン1世のために1568年に描いた「プトレマイオスの天動説」のイラストです。

 
紀元150年頃、クラウディオス・プトレマイオス(83年頃〜168年頃)はそれまで天文学を支配していたエウドクソスやアリストテレスの哲学的体系の天動説を、数学的に体系づけてまとめた数学と天文学の専門書「アルマゲスト」を著しています。このプトレマイオスの天動説は、13世紀から17世紀頃までカトリック教会公認の世界観だったこともあり、16世紀にコペルニクスが登場するまでの1000年以上宇宙を説明するモデルとして受け入れられていました。

3. プトレマイオスの世界地図:Ptolemy’s World Map(150年頃)

15世紀に描かれたプトレマイオスの世界地図。インド洋は閉じられた海と考えられ南北アメリカはまだ存在していません。

このプトレマイオスの世界感は、1000年以上過ぎたヨーロッパの大航海時代でも大きな影響を持っており、アジアへの近道と考えたコロンブスは西側航路を選択しアメリカ大陸を発見しています。

4. 月食:Lunar Eclipse(1019年)

1019年、中央アジアのホラムズ(現在のウズベキスタン領内)出身の学者アブー・ライハーン・アル・ビールーニー(973年〜1048年)が著書「占星術教程の書」で描いている手書きの月食のイラスト。太陽と地球の間に月が入ることで月が欠けて見える現象を解説しています。

またアル・ビールーニーは、天文学書「マスウード宝典」で地球の自転していることを説き、ほぼ誤差のない極めて正確な地球の半径を計算により導き出しています。

5. 神曲:Dante’s Divine Comedy(1308〜1321年)

イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリ(1265年〜1321年)の描いた長編叙事詩。3部作(地獄編、煉獄篇、天国篇)の地獄編で描かれた九圏(第一圏:辺獄、第二圏:愛欲者の地獄、第三圏:貪食者の地獄、第四圏:貪欲者の地獄、第五圏:憤怒者の地獄、第六圏:異端者の地獄、第七圏:暴力者の地獄、第八圏:悪意者の地獄、第九圏:裏切者の地獄)はカトリックの地獄のイメージを決定づけています。

また現在はオリジナルの「神曲」は現存しておらず、この地獄絵図はBernardino Daniello版「神曲」(1568年)のものです。

6. ウィトルウィウス的人体図:Vitruvian Man(1487年頃)

古代ローマの建築家ウィトルウィウスが紀元前30年頃に著した「建築について」の記述をを元にレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年〜1519年)が1487年頃に描いたスケッチ。

「髪の生え際から顎の先までの長さは身長の1/10と等しい」や「腕を横に広げるた長さは身長と等しい」など、円と正方形を使って人体の比率について描かれています。そのため医学に関するシンボルとして用いられていましたが、現在はそれだけにとどまらずイタリアの1ユーロ硬貨など様々なところで使用されています。

7. アンドレアス・ヴェサリウスの人体解剖図:Human Body(1543年)

現代人体解剖の創始者と言われるアンドレアス・ヴェサリウス(1514年〜1564年)による1543年に出版された解剖学の専門書「人体の構造につて(De Humani Corporis Fabrica)」に描かれている人体解剖図。

「ファブリカ」と略されるこの医学書のイラスト群は、医学の歴史の中で最も有名なものであり、登場する人体がとても奇妙なボーズをしていることでも知られています。

8. 太陽中心説(地動説):Heliocentric Universe(1543年)

ポーランドの天文学者ニコラウス・コペルニクス(1473年〜1543年)が著書「天球の回転について」(1543年)にて唱えた天文学史上最も重要な再発見「太陽中心説(地動説)」を表すイラスト。「天球の回転について」はコペルニクスの死後に出版されていますが、実際には亡くなる30年も以前に完成していました。

「天球の回転について」の発表後、神聖ローマ帝国皇室付数学官であったヨハネス・ケプラーがコペルニクスが唱えた惑星の円軌道をより正確な観測により楕円軌道に修正、そしてさらに時代は進みアイザック・ニュートンがニュートン力学を確立したことにより、地動説はほぼ全ての疑問(惑星の位置の計算や「なぜ鳥が取り残されないのか?」など)を証明可能な学説となっています。

ちなみに、ローマ教皇庁が正式に地動説を承認したのはガレレオの死後359年が過ぎた1992年です。

9. パッラーディオの「建築四書」:The Four Books of Architecture(1570年)

ルネッサンス期のイタリア建築家アンドレーア・パッラーディオ(1508年〜1580年)の著した建築書「建築四書」です。このイラストは、パッラーディオの「建築四書」に記されている、北イタリアのヴィチェンツァ郊外の「ヴィラ・アルメリコ・カプラ(ラ・ロトンダ)」の設計図です。

「ヴィラ・アルメリコ・カプラ(ラ・ロトンダ)」を含むパッラーディオの作品が多く残る地域は、「ヴィチェンツァ市街とヴェネト地方のパッラーディオのヴィッラ」として1994年に世界遺産(文化遺産)に登録されています。

また、パッラーディオの設計による建築物はその後500年間に多くの建築家に影響を与えており、アメリカ大統領官邸「ホワイトハウス」もパッラーディオ主義の影響を受けた設計になっています。

10. 水洗トイレ:Flush Toilet(1596年)

1596年にエリザベス1世の廷臣ジョン・ハリントン(1562年~1612年)が発明した水洗トイレ「Ajax」(当時、トイレを表すスラングがjakesだったためAjaxと名付けられています)の設計図。

図面に描かれている「D」は便座、「H」は受け止める容器、「L」は水門など細かく設計され、「Ajax」は現代の水洗トイレの先駆けとなっていますが、あまりイングランドでは普及はしなかったようです。しかし、フランスでは英国人を意味する「Angrez」と名付けられ使用されていた記録があります。

11. 月の観測スケッチ:Moon Drawings(1610年)

その功績から「天文学の父」、実験で確認する手法を重んじたことから「科学の父」などと称されるイタリアの天文・物理学者ガリレオ・ガリレイ(1564年〜1642年)が、自作の天体望遠鏡で観測して描いた月の観測スケッチ。

この月の観測スケッチが出版されるまで月は完全な球体だと考えられていたのですが、実際には山やクレーターなどが存在していることが一般に知れ渡りました。また、ガリレオは晩年に失明しており、その原因は天体望遠鏡を見過ぎたことによるのではないかと考えられています。

12. カラーホイール:Color Wheel(1766年)

イギリスの昆虫学者モーゼズ・ハリス(1730年〜1788年)が製作した世界で初めてのフルカラー・サークル。この18色のホイールは、赤・黃・青の3つの原色を元に作られており、黒色はこれらの色を重ねたことでつくられることを示しています。

13. 歴史の新図表:A New Chart of History (Joseph Priestley, 1769)

ジョゼフ・プリーストリー(1733年〜1804年)が製作した、1枚に18世紀までの世界の歴史が描かれたチャート「歴史の新図表(A New Chart of History)」です。

ウォリントン・アカデミー教師時代の著書「歴史と政策についての講義(Lectures on History and General Policy)」の内容を補強する目的で作られました。学生たちに「世界にこれまで存在した主な帝国の勃興、変遷、範囲、存在期間、同時代の正しいイメージ」を体系的に理解させるため、ヨーロッパ各国、トルコ(ヨーロッパ側、アジア側)、イラン、中国、インド、アフリカに至る世界106の王朝の勃興と衰退の歴史が1枚にまとめられています。

また、ジョゼフ・プリーストリーは酸素の発見や炭酸水の発明など科学者としても非常に高名な人物です。

14. 折れ線グラフ:Line Graph(1786年)

ウィリアム・プレイフェア(1759年〜1823年)は、人口統計学・経済学のデータをグラフ表現した初めての人物。この図表はプレイフェアが1786年に描いた色分けされた折れ線グラフ(横軸に時間、縦軸に量)。

また、ウィリアム・プレイフェアは折れ線グラフだけではなく棒グラフ(1786年)、円グラフ(1781年)も発明しています。

15. 顔文字:Emoticons(1881年)

アメリカの風刺雑誌「Puck」の1881年3月30日号に掲載された、世界で初めて解説付きで紹介された顔文字。画像下部に楽しい(joy), 悲しい(melancholy), 無関心(indifference),びっくり(astonishment)の4つ例が紹介されています。

現在では当たり前のように使用されている顔文字ですが、国によって大きく違いがあります。例えば日本では目の形で感情を表現するものが多く、アメリカでは口の形で表現するものが多いようです。

16. 宝島の地図:Treasure Island Map(1883年)

ロバート・ルイス・スティーヴンソン(1850年〜1894年)が1883年に発表した著書「宝島」に登場した”X”の文字で海賊の宝が埋まっている場所を記した「宝の地図」は、今日まで子どもたちをワクワクさせ続けています。

17. キュビスムと抽象芸術:Cubism and Abstract Art(1936年)

ニューヨーク近代美術館(MoMA)初代館長だったアルフレッド・バー(1902年〜1981年)が製作したモダニズムの発展においてキュビズムが果たした役割を強調して描かれたダイアグラムであり、20世紀モダニズムの歴史の分岐点となった。

18. Intel 4004(1971年)

日本のコンピュータ部品メーカ「ビジコン」とアメリカの半導体メーカ「インテル」が1971年に共同開発した世界初のマイクロプロセッサ「Intel 4004」の開発ノート。嶋正利氏(ビジコン)、フェデリコ・ファジン氏、デッド・ホフ氏、スタンレー・メイザー氏、フィリップ・タイ氏、ウェイン・ピケット氏などのチームメンバーで開発されています。また、この写真は、ピケット氏とタイ氏によって書かれた設計図の一部です。

開発当時の背景や詳細は、開発者の一人である嶋正利氏による4004の開発回顧録「【当時の勉強ノートを公開】世界初のCPU「4004」開発回顧録(1) それは電卓の価格競争から始まった:ITpro」に詳しく記載されています。

ソース:100 Diagrams That Changed the World | Brain Pickings

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