科学と技術

フィラメントの箱サイズに折り畳める逆さま出力3Dプリンター「Positron V3」


3Dプリンターの欠点は場所をとる上に運搬しずらいこと。工作機械として考えれば当たり前ですが、一方で生成物を現場で出力したいというニーズはたくさんあります。そんな新しい使い方に便利なのがこちらの「Positron」。フィラメントの箱サイズに折り畳め、必要十分な性能を発揮してくれます。


マサチューセッツ工科大学の学生、Kralynさんは2時間近く離れたキャンパス間で持ち運べる、課題制作のための3Dプリンターを模索していました。そこで完成したのがこちらの「Positron V3」。

モノの試作では修正を何度も繰り返すため出力速度、ひいては高速で動くツールヘッドを支えられる剛性が必要になります。一方で運搬のためには筐体を分割することは避けられません。

この相反する要求を、Kralynさんは一般的なFDM式3Dプリンターとしてはユニークな「逆さま出力」で解決しました。

重量は2.7kgで大型のラップトップPC並み、そして標準的な1kgフィラメントの箱に収まるコンパクトサイズながら、180*185*180mmの出力が可能です。

とにかく駆動系をコンパクトにするべくシンクロメッシュロープを採用。CoreXYタイプを逆さまにしたようなデザインによって主要な機構が下方にまとめられ低重心となっており、筐体が震動しにくくなっています。また稼働部分にモーターが少なく軽量なため制御しやすく、出力の高速化・高精度化に寄与しています。

ヒートベッドはボロシリケイトガラス製。透明なので第1層の定着度合いが裏面からでもチェック可能。

マグセーフ式コネクタで取り外しも容易。逆さま出力でも出力物の取り出しに苦労しません。

大変完成度の高いプリンタですがKralynさん自身の事情で販売体制を作ることができないそうで、全ての設計図とコードがGitHub上でクリエイティブ・コモンズライセンスにて公開されています。

冷却能力や多様な材料への対応など弱点はいくつかあるものの、実用のための出力物全般、いわゆる「Functional Print」向けとしては小型で収納性の高いものは全然あり。先日、超小型レジン3DプリンターのTinyMakerがKickstarterで大好評でしたし、なにより必要な機能が凝縮されている塊感が魅力的なプリンターです。
Meet TinyMaker 3D Printer – YouTube

ソース:A 3D printer unlike any other, fits inside a spool box? – Positron V3 intro & Design Story – YouTube

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