科学と技術

アメリカ陸軍の次期アサルトライフルを決める次世代分隊火器コンペをシグ・サウアー社が突破


アメリカ陸軍が現在のM4制式小銃を代替するものとしてコンペを進めていた次世代分隊火器(Next Generation Squad Weapon……NGSW)について、軍は現地時間2022年4月19日、シグ・サウアー社と契約を締結すると発表しました。

NGSWは2017年末からプログラムが開始され、最終的にTextron社、ジェネラル・ダイナミクス社、シグ社の3社がコンペを争いました。M4の前身にあたるM16自動小銃の時代から考えると実に60年以上ぶりの制式小銃更新ということもあり、プロトタイプの開発とテストは実に27か月に及びましたが、シグ社の案が契約を勝ち取りました。

契約は10年間の確定固定価格による継続生産契約で、まず2千40万ドル(約26億円)が今後のテストのための機材購入に使用されます。

NGSWはいわゆるアサルトライフル(NGSW-R)と軽機関銃(NGSW-AR)で構成されます。こちらはNGSW-R。米軍の制式番号はXM5。シルエットは現行のM4制式小銃と類似していますが6.8×51mmと大型化された.277 FURY弾を使用するため弾倉が大型化されている点が目を引きます。なお既にMCX-SPEARとして民間バージョンの発売が決定しています。

NGSW-AR。米軍の制式番号はXM250。いわゆる分隊支援火器にカテゴライズされる火器ですが、全長は-Rと同程度、重量は現行のM249より2kg以上軽量化され、携行性が高められています。また機関部全長をカバーするようピカティニーレイルが装備され、光学機器の取りつけの自由度が増しています。

NGSWの最も大きな特徴は、昨今の歩兵装備における防弾装備の強化に対抗すべく大型化された.277 FURY弾。弾頭重量は現行の5.56mmの倍ほどの135グレインに増加しているにも関わらず、ほぼ同じ銃口初速を達成しています。その分高い圧力に耐える必要があり、これは重量増、ひいては携行弾数の低下につながりますが、.277FURYでは鋼鉄の底部に一般的なものよりも軽量に作られた真鍮の胴体を組み合わせ、最小限の重量増にとどめています。
New for 2020: SIG Sauer .277 SIG Fury Ammunition – YouTube

M16が制式採用された当時と近年のアメリカ軍歩兵装備の比較。ヘルメットに加え防弾チョッキが追加され、携行弾数も大きく増加しているのが分かります。これに通信機や暗視装置といった電子機器とバッテリーが加わり、装備の過重による戦闘力の低下が指摘されていました。

NGSWでは敵の防弾装備を貫通できる威力を持たせる一方、装備の減量もまた課題の一つでした。この矛盾した問題を解決するには、最小限の弾薬で最大限の火力を発揮する必要があります。このため、照準器の大幅なアップデートが行われ、NGSWでは電子支援式のXM157火器管制装置が搭載されます。

これはVortex社が開発・生産し、1‐8倍の可変倍率スコープにレーザーレンジファインダー、弾道計算機、大気センサー類、コンパス、個人間ネットワークのデータ、照準用赤外レーザーなどのデータを統合して投影するというものです。こちらはVortex社による解説動画。投影されるデータはおそらくコンペのライバルであったL3社のモデルと近しいものと思われます。兵士個人が正確な射撃を行えることはもちろんですが、チーム間で様々なデータを共有・交換・統制することで、分隊・小隊といったレベルでの射撃の効率を上げることを目的としています。将来的にはこちらも開発中のARゴーグルとも接続されます。
Army selects Vortex for Next Generation Squad Weapon – Fire Control. What is it? – YouTube

大口径化による600メートルまでレベル4の防弾装備を貫通するパワー、近年のトレンドを取り入れたエルゴノミクスに優れた操作系、電子補正による高い命中率……となかなかよい話が多いのですが、専門家の間ではハイパワーな弾薬による銃身や各部品の耐久性の問題や、射撃時の反動の強さが指摘されています。こちらの動画では実際にNGSWを試射していますが、かなり反動は強そうです。
US Army M4 replacement Military NGSW Program Explained – YouTube

確かに現在の小銃から改善された点は多々ありますが、それが使い慣れた現在の小銃と何千万発とある現在の5.56mmNATO弾の備蓄を今後入れ替えていくコストに見合うベネフィットがあるのかどうかはまだ分かりません。米軍はM16シリーズを何度か入れ替えようと試みていますが、その度にお蔵入りになっています。NGSWは生き残ることができるのでしょうか?
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ソース:Army awards Next Generation Squad Weapon contract | Article | The United States Army

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