アートとデザイン

超高層ビル群がまるごとスラム化したベネズエラの「ダビデの塔」のモノクロ写真シリーズ「The other side of the Tower」


「ダビデの塔」というとイスラエル・エルサレムの旧市街の城塞として残る歴史的な建築遺産が非常に有名ですが、南米ベネズエラの首都カラカスにも同じく「ダビデの塔」と呼ばれる象徴的な建築物があります。この天まで届く勢いの超高層ビルは、数十年に渡りスラムを形成し世界一高いスラム街の一つとして知られてた存在となっています。

南米・ベネズエラの首都カラカスの下町にそびえ立つ「ダビデの塔」は、ベネズエラ全土で3番目の高さを誇る地上45階、高さ190mの超高層建築物。元々この双子の超高層ビルは「セントロ・フィナンシエロ・コンフィナンサス(Centro Financiero Confinanzas)」という名称でベネズエラの金融の中心地として計画され、1990年に工事が始まっています。しかし着工から4年後、60%まで完成していたにもかかわらず1994年にベネズエラで起こった金融危機により工事は中断し、廃墟化していきます。

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工事開始から13年後の2007年、この「ダビデの塔」はベネスエラを襲った住宅危機によって家を失くした約2000家族による不法侵入が始まりスラム化が始まることに。最近の調査によると現在は約1300人が住んでいるとされていますが、最盛期には約3000人を超える住人が暮らしていました。

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そしていつしかダビデの塔は最も凶悪な犯罪の巣窟という悪評が立ち非常に危険な地域と認識されていきます。皮肉にも住人たちによってビル内のセキュリティが強化されているのですが、外部から差別されることを恐れ非常に閉鎖的な社会が形成されています。

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このベネズエラの「ダビデの塔」について、ベネズエラ政府はまだ正式決定したことはないとしていますが、中国の銀行が本来の金融危機ビルとしての活用を目的に買収したとの報道がなされています。いずれにしても、このまま放置する訳には行かず、近年中には大きな変化がありそうです。

「The other side of the Tower」は、ベネズエラ・カラカス出身の写真家 Alejandro Cegarra 氏による作品。ライカのカメラを生み出したドイツの精密機械エンジニア オスカー・バルナック(Oskar Barnack)の名前を冠した写真コンテスト「Oskar Barnack Award 2014」でニューカマー賞を獲得しています。
Leica Oskar Barnack Award

こちらは作者の Alejandro Cegarra 氏も登場する「デービットの塔」での写真撮影時の映像です。
Alejandro Cegarra: Oskar Barnack Newcomer Award Winner 2014 on Vimeo

建物自体がスラム化した例はこの「デービットの塔」だけではなく世界中には幾つか存在しています。その中でも特に有名なものはかつて香港に存在していた「九龍城砦」。高さはそれほどでもありませんが迷路のような巨大都市を形成するビル群がまるごとスラム化していました。
東洋の魔窟「九龍城砦」の内部構造が詳細に描かれたパノラマ断面図

これらの写真はベネズエラ・カラカス出身の写真家 Alejandro Cegarra 氏の作品です。

ソース:Alejandro Cegarra – The other side of the Tower

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