電子計算機の黎明期に女性がワイヤーを手編みして生産していた記憶媒体「磁気コアメモリ」
19世紀末の機械式計算機の頃から、コンピューターにプログラムを入力するのは女性の仕事とされてきました。その最後の時代にあたる50年代、現在のコンピューターのディスクやメモリにあたる記憶媒体は、女性がワイヤーを手編みして作っていたのです。
こちらが「磁気コアメモリ」。見えている部分で1024バイトの情報を記録できます。
フェライトコアに縦横斜め方向からワイヤーが通っているというのが基本的な仕組み。
縦横のワイヤーが書き込み用。それぞれに弱めの電流を流すと、交点では強めの電流になるのでフェライトコアの磁性が変化し、ゼロかイチかを記録できます。つまりコア一個で1ビット。
読み出しは、書き込み用ワイヤーに電流を流し、フェライトコアの磁性が変化するかどうかを斜め向きワイヤーで調べます。読み出しのたびにデータが変化しますが、基本的には磁力で記憶をするので電源を切っても内容を記憶できるのがポイント。
また、ワイヤーの編み方をコアごとに変えることでいわゆる「ROM」にもなります。「コアロープメモリ」と呼ばれ、アポロ11号の誘導システムはこれに記録されて、人類を月へと送り込みました。
磁気コアメモリの製造や、コアロープメモリへのコードの「入力」には女性が大活躍しました。小さな穴に大量のワイヤーを通す作業に縫製工場の経験者が多数採用されたためです。当時、縫製は女性が活躍する職業でした。
コアロープメモリを編むレイセオン社の女性エンジニア。
見ての通り非常に細かい作業で、縫製の技術が大いに役立ったそうです。
レイセオン社の女性エンジニア。日本でも東京電気化学工業(現・TDK)や東京通信工業(現・ソニー)といった企業が大量に女性を採用し、生産にあたっていました。
8×8=64ビット=8バイトの磁気コアメモリ。その上に置かれた約10億倍の容量を持つ8ギガバイトのmicroSDカード。
磁気コアメモリは広く使われ、70年代初めごろからは半導体を用いたDRAMに取って代わられはじめます。とはいえ、その後しばらくはスペースシャトルの飛行制御システムや、こちらの軍用コンピュータなどシビアな用途に用いられました。
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ソース:That Time When Computer Memory Was Handwoven by Women | Amusing Planet
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