「最近引退して家族に告白した元CIAのケース・オフィサーだけど何か質問ある?」に寄せられた質問いろいろ
対外諜報工作を行うアメリカの情報機関CIAの職員はなんだかとてもドラマとアクションに満ちた日々を送っていそうですが実際のところはどうなのでしょうか。最近引退したCIAのケース・オフィサー(現場担当官)が、ネットで質問に答えていました。
私はCIAの作戦本部(DO)に配属されていたケース・オフィサーです。アフガニスタンや中東に複数回派遣されました。特にオバマ大統領によるアフガン派兵中はずっと同国に滞在、多数のアルカイダ・タリバンの幹部を拘束するとともに当時最大のIED(即席仕掛け爆弾)製造ネットワークを壊滅させました。パキスタンに潜伏していたウサマ・ビンラディンを殺害したネプチューン・スピア作戦の時もアフガニスタンのカンダハルにいました。最後の任務はシリア内戦に関する極秘のタスクフォースでのものでした。
これらの経験、さらに他の色々な出来事について最近「爆発寸前:若きケース・オフィサーはいかにしてタリバンとアルカイダに浸透したか(Left of Boom: How a Young CIA Case Officer Penetrated the Taliban and Al-Qaeda)」という本を書きました。
今日は皆さんからの質問に、可能な限りお答えします。お答えできないものについては頑張って説明します。まず最初に断っておくと、僕は今独身で結婚経験もないし子どももいない。でも元同僚以外には自分のキャリアについて秘密にしている。この10年で秘密を打ち明けたのは弟だけだ。父と母には先週、ニューヨーク・タイムズに僕の本の記事が出る前の日に話したばかり。今が一番いいと思ったからだ。
ちなみに彼らや友人にはずっと「うだつのあがらないセールスマンだよ」と言ってきた。平凡な答だからそれ以上質問されることもない。アフガニスタンに派遣される時は「ハワイに引っ越す」と知らせた。誰も訪ねてこれないように、僕の育った中西部から一番遠い州にしたのさ。もっとも何度か来たがったことはあるんだけど、忙しいとかなんとか言い訳をつけて断った。
実際、家族はショックだったようだったけど、今ではみな僕がTVやラジオに出ているのを楽しんでいるよ。僕もこの10年の胸のつかえがとれて嬉しい。
まず、スパイになるためにはどうすればいいのか……基礎的ですが重要な情報です。
Q:
どうやってCIAになったの?応募したの?それともリクルートされたの?A:
出身のインディアナ大学にリクルーターが来て説明会をやったんだよ。それでネットから応募したんだ。応募要項は全部公開されてるから詳しいことはそっちを見て欲しい。麻薬の経験があるとまずダメだね。あとは教養があって、あまり視力が悪く無い人であればいい。
Q:
CIAに入るのにどういうことを勉強していないとダメ?A:
CIAに入るのに有利な資格というのはないんだよね。軍歴はプラスになるかもしれないけれど、ケース・オフィサーになる準備というのはできないと思う。みんな同じ所からスタートだ。
秘密が多い仕事なので、他人にうっかりしゃべることはできません。苦労の多い仕事です。
Q:
社会生活に何か支障はあった?A:
新しい人と知り合いになるってことは、嘘をつく相手が1人増えるってことだからね。嘘を隠すのにまた嘘をつくから、最後には誰にも会いたくなくなった。まぁそういう仕事だから仕方なかったけどね。
Q:
誰かにバレそうになったことはある?その時どう思った?A:
もちろん。近しい人はみな疑っていたと思う。ガールフレンドとか。彼女たちはずっと僕が浮気してるとか麻薬の売人だとか、そういう風に思っていたと思う。いつも文句を言われていたよ。本にも書いたけど、一度彼女にタンスに隠していたCIAの身分証明書を見られたことがあるけどあの時はもう大変だった。
Q:
そういう作り物の人生を後悔したことがある?どうやってニセの経歴を作ったの?A:そうは思わない。なぜなら仕事を隠していただけだからね。それ以外の部分はできるだけ普通にするように努力していた。
スパイ映画では大体殺されかけるスパイの皆さんですが、実際どれくらい危険なのでしょうか。
Q:
任務の中で命の危険があったものはどれくらいある?A:
僕は現場のケース・オフィサーだったから、戦場にいるだけでも危険だし、その上CIAの職員ともなると色んな勢力から狙われる。だから技術を磨いて、目立たないようにするのはとても大事なことだった。そしてアフガニスタンという土地そのものが危険だ。僕みたいな普通のアメリカ人には気候や病気が厳しすぎる。
Q:
映画みたいに尾行したり、追手をまいたりするの?A:
「ゼロ・ダーク・サーティ」はかなりリアルな映画だよ。なんといってもCIAが協力しているからね。デビッド・ホフマンの「The Billion Dollar Spy(未訳「10億ドルのスパイ」)」は諜報技術・対諜報技術について解説している。
こういう事件をみると、確かに狙われいる感じがしますね。
Q:
2014年に連邦人事管理局(OPM)から2150万人の個人情報が流出したけど、あの中に入っていた?A:
うん。事件を知らせるメールが来た時はうんざりした。
映画っぽいアクションはどれくらいあるのでしょうか。
Q:
ケース・オフィサーってTOC(指令センター)で仕事してるの?実際にDA(急襲)するのはSOG(特殊部隊)の人たちだよね?A:
なるほどあなたは軍関係者なんだね。僕は現場の人間だよ。ケース・オフィサーは報告書を作成している時以外は現場に出ている「べき」だと思う。重要人物にあって情報収集をするべきだ。これはデスクからじゃできない。実際に会わないと。だからHUMINTって言うんだよ。
とはいえ僕が迷彩服を着ていたわけじゃない。もっと普通の目立たない格好していたよ。そうやって得た情報でDAしてもらうんだ。
アクション映画では敵役になることも多いCIA。軍とはどれくらいの関係なのでしょう。
Q:
CIAとJSOC(統合特殊作戦コマンド)は協力関係にあるけど、JSOCの下に入ったほうがCIAにとってよくない?A:
CIAは文民の組織で、すべての情報機関にとってそれは重要なことだ。僕はそう思っている。
CIAは社会や地域の事情について調査しますが、戦闘に必要な軍事情報となるとやはり兵士のほうがよく集められるようで、実際JSOCは自前の情報収集部隊をもち、こそこそと動き回っていると伝えられています。
一緒に仕事をする以上、仲良くなっておきたいものですが……。
Q:
CIAでやった一番バカなことはなに?A:
いいね。突入部隊のおっかない人たちと仲良くなりたくて、噛み煙草をやってみたんだけど、あっという間に気持ち悪くなってゲロを吐いた。腰抜けと思われたくなかったからコーラを飲んでからもう一回やってみたけどやっぱり吐いた。その日は早退した。
Q:
CIAについて誤解されていることって何?A:
1. 「CIAが9.11の首謀者」と信じているやつはアホだ。
2. CIAエージェントと呼ぶのはやめて欲しい。CIAオフィサーだ。エージェントはFBIだ。みんなキアヌの真似をして「俺はC-I-Aエージェントだ!」って言うんだけどうんざりだよ。
Point Break – I Am An FBI Agent! (1080p) – YouTube
ともかく、僕らは人間でカゼを引くしクシャミもするし落ち込むし恋人に振られるし泣くしセックスするし食べるしトイレにも行くし間違いだって犯す。僕らは人間だ。CIAのことを考える時はこのことを忘れないでほしい。
最後に非常に重要な質問だったのがこちら。
Q:
あなたのネコが二重スパイである可能性は?A:
やつにはオレグ・ペンコフスキー(キューバ危機で活躍した伝説的スパイ)の名前をつけた。可能性はある。
ネコがスパイなんて……!と思うかもしれませんが実際、当のCIAが改造ネコで旧ソ連大使館をスパイしようとした「実績」があるので、油断がならないところです。
1000万ドルかけて猫をスパイに改造したCIAの極秘計画「アコースティック・キティー」 – DNA
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