ロッキード社最高の頭脳を結集した軍用機開発集団「スカンクワークス」の14箇条の運営ルール
あるジャンルの歴史を追うと、必ずどこかにエポックメイキングな天才が現れます。軍用機ロッキード・マーチン社の、政府・軍向け開発部門「スカンクワークス」はまさしくそうした特異点の一つ。そして数々の傑作航空機を生み出した天才集団には、そのボスが定めたあるユニークなルールがあったのです。
「スカンクワークス」はその名の通り軍や政府向けのあまり表にできない「臭い仕事」をやる部門。エリア51でこっそりと活動する彼らは、名前こそちょっと醜いのですが、ミサイルが飛べないくらいの超高空から侵入し、航空写真を撮影するために作られたA-12偵察機とその改良型であるSR-71など、時代を代表する機体を多く生み出してきた部門です。
この「スカンクワークス」を率いていたのがロッキード社のクラレンス・ケリー・ジョンソンでした。自身も素晴らしい航空機設計者ですが、彼はこの天才集団を率いるにあたり、以下の様なマネージメントのルールを定めていました。以下は「ケリーのルール」として知られている14箇条です。
1.
スカンクワークスのマネージャーには計画のあらゆる面について、完璧に近いコントロールを託さなければいけない。また報告の相手は部門長かその上の階級の者だけですむようにすること。
2.
プロジェクト事務局は官民の協力によって小さく保たれるべきである。
3.
計画に関わる人数は厳しく制限しなければならない。優秀な人間を選び、一般的な組織と言われるものの10%から25%に人数を絞るべきである。
4.
設計はシンプルに、そして設計の変更のための手続きは多分に柔軟なものでなければならない。
5.
報告書の数は最小限に。しかし重要な仕事はしっかり記録されるべきである。
6.
ひと月ごとの予算レビューにおいては、これまでの出費内容を確認するとともに、将来のコストを予測すべきである。
7.
請負契約において大きな権限と責任を認めることで、よい入札価格を得ることができる。一般的に民間の入札システムは軍のものよりもよくできている。
8.
スカンクワークスの査察システムは空軍と海軍の認証を受けている。軍の要求に耐える水準であり、今後のプロジェクトでも適用すべきである。責任を下請け企業やベンダーと共有し、同じ査察を難度も繰り返さないことだ。
9.
設計者は最終製品のテストに関する権限を与えられるべきだ。さもなければその設計者は他の製品を設計する能力も失ってしまうだろう。
10.
ハードウェアの仕様に関しては、その根拠を含めて契約の以前にきちんと合意に至るべきである。
11.
資金提供は迅速にし、請負企業が政府のために銀行に走らずに済むようにすべきである。
12.
軍の計画組織と請負企業は互いに信頼すべきである。より緊密に協力し、日毎情報共有することで誤解と連絡の必要を極小まで下げることができる。
13.
部外者による計画への接触は、適切な保安手段によってコントロールされなければならない。
14.
プロジェクトに参加する人数は少なく絞らなくてはならない。よって報奨を与えるにあっては、部下の数を基準にしてはならない。
なおクラレンス・ジョンソンのルールには非公式に15、16、17番目が存在するそうで、以下の様なことを繰り返し部下に語っていたそうです。
15.
海軍と仕事をしてはいけない
16.
レポートは20ページ以内、会議は15人以内で行うこと。
17.
みっともない飛行機はみっともない飛び方をする。
いかにも技術者の、技術者による、技術者のためのルールという感じですが、スカンクワークスやその周辺ではクラレンスが引退したあともこの「ルール」が生きていたようです。その後のエリア51で働いていた技術者がネットで質問に答えていますが、クラレンスの作った文化が生きていることが伝わってきます。
ソース:Legendary Skunk Works Founder Kelly Johnson’s Rules Of Management
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