17世紀の女性昆虫学者が精密にスケッチした昆虫・植物図鑑「Erucarum Ortus」の美麗なイラストレーション
ごく最近まで、生物の生態の記録は観測者のスケッチによって行われていました。その中でも17世紀の女性研究者、マリア・ジビーラ・メーリアン(Anna Maria Sibylla Merian)の植物・昆虫の詳細なスケッチはよく知られたところ。今でも賞賛されるその「作品」をご覧ください。
マリア・ジビーラ・メーリアンは1647年にドイツに生まれ、13歳の頃から母の再婚相手である静物画家のヤコブ・マーレルから水彩画の手ほどき受けました。
当時のこうした「観察スケッチ」は人間の自然に対する優越を示すため、しばしば情景がねじ曲げられたり、アレンジを加えてから描かれていました。マリアのスケッチが優れていたのはありのままを正確にスケッチした点です。
特にイモムシから蝶への変態を記録したスケッチは「虫は『腐った泥から自然発生した』」というキリスト教の影響を受けた当時の自然発生説と真っ向から対立するもので、あわや魔女として異端の疑いをかけられるところでした。
こちらの「Erucarum Ortus Alimentum et Paradoxa Metamorphosis(ヨーロッパ産鱗翅類‐その変態と食草)」は150もの昆虫・植物の図版が収められています。元々はドイツ語で書かれていたものですが、当時の学術界ではラテン語で書かれていない論文は受け入れられず、彼女の死後1年経ってから翻訳が終了し出版されました。
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マリア・ジビーラ・メーリアンの絵は研究資料としてはもちろん、美術品としても高い評価を得、その作品はロシア皇帝ピョートル1世も買い求めるほど。研究者としても20世紀後半になって大きく注目されるようになり、ドイツを代表する人物の1人として扱われています。
ソース:BibliOdyssey: Erucarum Ortus
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