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97年の重大事故から生還した旧ソ連出身の宇宙飛行士だけど何か質問ある?


酸素発生装置の火災に無人輸送船の衝突、電力の喪失によってコントロールを失い、不気味に回転する宇宙ステーションの中、地球の「夜側」の真の暗闇を耐える宇宙飛行士達……まるで映画のようですが1997年にあった本当の事故を生き残ったソ連の宇宙飛行士が、インターネット掲示板「Reddit」で質問に答えていました。

質問に答えているのはロシアの宇宙飛行士であったアレクサンドル・ラズトキン

旧ソ連のミール宇宙ステーションはすでに建造から10年近く経っており老朽化が指摘されていました。また、ソ連崩壊にともなう政治的混乱と予算の削減もあり、地上側も乗組員も人間関係はかなり悪化していたようです。

この事故の顛末についてはブライアン・バロウ著になる大長編ノンフィクション「ドラゴンフライ- ミール宇宙ステーション・悪夢の真実」が克明に記録していますが、ラズトキンはまさにこの事故のさなか、宇宙にいたのです。

現在ラズトキンは宇宙・惑星開発のリアルタイムシミュレーションゲーム「Space Pioneer」を製作中。Kickstarterでのファンディングの宣伝のため掲示板に現れました。惜しくもファンディングは失敗したようですが、現在も公式サイト上で寄付を募集しています。

宇宙に行ったことがある人にしか分からない質問です

Q:
宇宙の広大さに圧倒されたことはありますか

A:
いつもそう思います。自分がこの宇宙の中でどれだけちっぽけな存在なのかはっとさせられます。

Q:
宇宙で起こった最もありえない出来事は何?

A:
自分がそれまでの人生を過ごしたすべてがある惑星を振り返って見ることですね。これはありえない経験ですよ!

Q:
宇宙食はどんな味ですか?

A:
驚くかもしれませんが美味しいのです。ピザも開発されたそうですしね!

Q:
宇宙でのセックスについて

A:
何事も経験ですよ……

└えっ本当にあったの……?

Q:
宇宙に行く時に忘れ物をしたことがありますか?

A:
妻を連れていくのを忘れました!

ソ連崩壊前後の宇宙飛行士ということで、やはりその時代に関する質問がたくさん見られました。

Q:
ロシアとアメリカはかつて宇宙開発競争のよきライバルでした。今でもお互いの間に禍根は残っているのでしょうか。それともそういうものはもう過去のものなのでしょうか。

A:
ソ連時代はもちろん敵対意識はありましたが、それは冷戦下の政策によるものです。今ではもうありません。私達はともに宇宙開発を行う友人同士です。同じ障害(予算ですね)を共有し、みな人類が星に向かえる日を望んでいます。

Q:
アメリカがスペースシャトルを退役させたのをどう思いますか?やっぱりちょっとはいい気味だと思いますか?

A:
いえ、とても残念に思いますよ。政治家くらいしか喜ばないのではないのでしょうか。

Q:
宇宙飛行士になる訓練で一番大変だったのはなんですか?乗り越えなければならない限界はありましたか?また、宇宙開発事業から退いたにも関わらず、こうした宇宙関連のゲームを作ろうと思ったのはなぜですか?

A:
スポーツ学校出身でしたし今でも器械体操やパラシュートの訓練を行っています。なのでトレーニングは大きな問題ではありませんでした。家族と離れて過ごすのが大変でしたが、私は若く希望に燃えていたのです。

私はいつも人々に宇宙はどれだけ面白い場所か見せたいと思っていました。「Space Pioneer」によって空に目を向けてくれる人々がもっともっと増えて欲しいのです。

Q:
ソ連時代はなつかしい?

A:
もちろんソ連を懐かしく思います。私にとってはファシズムを打倒し、宇宙飛行士を育て、素晴らしい航空機を作った国です。当時はみな明るい未来を夢見ていました。

事故についてもやはり気になるところです。

Q:
どういった事故に直面したのですか?またロシアの宇宙飛行士はどのように見られていますか?西側のように「超人的」と思われているのでしょうか。

A:
みなさんよくしてくれます。トラブルについてはまず火事、減圧事故、生命維持システムの故障ですね。私達の時代には特にミールでの問題が多かったように思います。

Q:
(モジュールを減圧して火災を止めたことについて)どのようにしたのですか?スペアの酸素はあったのでしょうか。

A:
気密が破れたモジュールを閉鎖し、それから宇宙遊泳用の酸素タンクから放出しました。

Q:
ミール放棄になった場合の脱出計画はあったのでしょうか。準備にどれくらいかかるものなのでしょうか。

A:
もしそうなったらソユーズ宇宙船を使う予定でした。これは貨物や脱出用に常にドッキングしているのです。

Q:
ミールの事故の後、電源を喪失したまま地球の夜側に入ったと言っていましたが、どうして平気でいられたのですか?怖くなかったのですか?

A:
もう怖いなんてもんじゃなかったですよ!でもまだ生きていたから、それで平気だと思えたんです。

認知の向上・啓蒙について映画やゲームはメジャーなメディアになりました。

Q:
「ゼロ・グラビティ」についてはどう思う?

A:
予告編しか見てませんがよさそうな映画ですね。正確ではないでしょうが面白そうです。宇宙への関心が高まる映画はいいですね!

Kickstarterで最も多く、また最もリジェクトされるのがゲーム。みんながこういう不安を抱えていることは知っていてもいいかも。

Q:
プロジェクトについて読んでみると、募集している出資額(15万ドル≒約1500万円)に対してゲームのスケールが大きすぎるように思います。またチームの誰一人として、ゲーム開発の実績が見られません。実際のところディレクターが「宇宙物理とゲームに興味がある」と書いているくらいです。こうした不安を解消してくれる何かを提示することはできますか?

A:
私達のチームは業務用の宇宙機シミュレーターを作ってきた宇宙飛行士で構成されています、なので娯楽用のシミュレーターとRTSを組み合わせたものは簡単に開発できます。またリストに載っていないメンバーはゲームの開発スタジオ出身です。

現在はプリプロ段階であり、リアルさよりもストーリーを重視しています。このため開発版ゲームはじきにお見せできますが、実際のゲームの内容とはまた違ったものになると思います。

同じお金を使うならうまく使いたいものです。火星への飛行が25億ドル(2500億円)は超ディスカウントというかありえない仮定の額ですが……。

Q:
ソチ冬季五輪の費用が510億ドルだとどこかでききました。火星への有人飛行は25億ドルなんだそうです。予算不足という問題について政治家の無知や大衆の誤解が原因だと思いますか?

A:
いずれも少しずつ問題だと思います。もっともソチ五輪はそれ自体不条理なものと思いますが……ともあれ人々には宇宙に出て行くという意識を持って欲しいし、政治家は宇宙開発への関心が高まっていると知るべきです。米ソの宇宙開発競争以前から人々の関心はあったわけですし、今再び関心を高めることはできるでしょう。

ところで私は「スター・トレック」を見てNASAやロスコスモスの従業員になる興味がわきました。同じことが「Space Pioneer」で起きるといいと思います!

Q:
火星でオリンピックをやるのがいいかもしれませんね

A:
それはいい。プーチンの次の計画はこれだね。僕らのゲームにも入れようかな……

最後にみんな気になる「ソ連の宇宙飛行士あるある」について。

Q:
THIS IS HOW WE FIX PROBLEMS ON A RUSSIAN SPACE STATION – YouTube

この動画みたいに、何かが動かない時にもうどうでもよくなって機械を殴ってしまう、ということはありますか?地球ならともかく宇宙で命がかかっている時に常に100%冷静でいられるとは思えないのですが。

A:
これはロシアの標準作業手順ですねぇ。「何かが故障したらハンマーでなぐれ!」ということわざもあります。

もちろんジョークだとは思いますが……ロシアは金庫にしまった核の発射装置を取り出すために巨大なハンマーを用意していた国なので絶対にない、と言い切れないところが怖いですね。

こうした実体験に基づく「Space Pioneer」は、エンタテイメント性の高さとそしてリアルさの高さを併せ持つ惑星開発RTS。「シムシティ」のようにコロニーを開拓し、入植先のエイリアンと戦うシミュレーションゲームだそうです。完成したところを見てみたいものですね。

ソース:I am a cosmonaut who has survived numerous catastrophes during my stay in space. I’m currently developing a game called Space Pioneer. My name is Aleksandr Lazutkin and Ask me Anything! : IAmA

トップ画像:sts076-713-083 | Flickr – Photo Sharing!

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