発展途上国にDIYで無線インターネットを提供するオープンソースプロジェクト「FabFi」
今回の震災でも明らかになりましたが、インターネットが必要なのはあらゆる情報から切り離されてしまった人たちです。通信のためのインフラや知識がまったく無いところに誰でも作れて使用できる無線インターネット環境を提供するオープンソースプロジェクト「Fab-Fi」が、アフガニスタン復興において注目されているようです。
「Fab-Fi」プロジェクトを推進しているのは、アフガニスタン・ジャララバードに拠点を置くNGO団体FabLab。もともとはアメリカ・マサチューセッツ工科大学のメディアラボの1部門であるCenter for Bit and Atom(CBA)からスタートした組織で、11カ国に40の支部の支援のもと、地元の人がハイテク技術を自ら扱うことができるよう継承することをミッションとしています。
Fab-Fiはオープンソースなメッシュネットワークの構築システムを提供。既存の技術や製品を使用するため、極めてローコストなのが特徴です。これは無線LANの受信感度を上げるための巨大リフレクター。
木やプラスチック、金網や金属板があればすぐに作れます。このリフレクターで反射した電波をルーターで受信します。最長で6km、実スループット11.5MbpsというADSL並みの性能が出ているそうです。
ルーターも市販のもの。このセッティングだと雨や雷が怖い感じですね。
メッシュネットワーク構築のために、オープンソースのファームウェア(組み込み用Linuxディストリビューション)「OpenWrt」を使用して改造しています。
このアクセスポイント一つを構築するのに必要な費用は約60ドル(約4800円)。アフガニスタンの平均年収が500ドルくらいなのでコミュニティ単位で所有するには安価と言えるでしょう。ありとあらゆるところに電柱が立っている日本と違って、電線1本引くにも大変な苦労が必要な国ではかなり有利なオプションではないでしょうか。
現在、Fab-Fiはアフガニスタンのほかにケニアでも運用試験中で、普及に伴い回線容量が不足しはじめたという報告がBlogにあがっています。FabLabでは僻地のコミュニティや非営利組織に技術を提供する一方、小額の利用料を徴収しコミュニティISPとして運営費用を捻出する方向に進んでいるそうです。
発展途上国に足りないものはたくさんありますが、おそらく最も必要で調達が難しいのが「教育」でしょう。学校を建てる予算もなければ、子どもも重要な労働力とみなされているため、勉強する時間もありません。
インターネットが素晴らしいのは、こうした子ども達と知識を直接結びつけることができるという点です。そういう時代に育った人たちが何を作り出すのか、今から本当に楽しみです。
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