なぜ「よくないね!」ボタンは必要ないのか
Facebookの「いいね!」ボタンやGoogleの「+1」ボタンなど、気軽に賛同を示せるものはたくさんありますが「よくないね!」的なボタンはあまり見かけません。これはいったいなぜなのでしょうか。実は「評価」というものができあがる仕組みに秘密があるのです。
まずはこちらのグラフを見てみましょう。これはYelp(グルメレビュー)、Amazon、Netflix(ストリーミング映画配信)、Reddit(掲示板)でのすべての評価を集めたもの。
ピンク色の部分が「否定的」ですが、いずれのサイトにおいても「ダメ(星1~2個)」と評価されているものが2割に達していません。(Amazonの「3」は肯定・否定があいまいなので集計なし、Redditは良否の2段階なので緑の中間値がありません)
このうち「星1個」はYelpで4%、Amazonで6.9%、Netflixで4.8%でした。
なぜ「ダメ」はこんなにも少ないのでしょうか。これは「ダメなものに注意を払っているヒマはない」からです。一般的には、価値のないもののためにわざわざ「よくないね!」とクリックしたりレビューを書いているヒマはなく、したがって「星1個」や「低評価のレビュー」というのは少なくなるのです。
また調査されたサンプルは食べ物屋さんや本、映画など、ある程度中身が予測できるものです。明らかに「ダメ」なものはみんな最初から避けて通るので、レビューの総数が少なくなり、当然「ダメ」という評価の数も減ります。
では逆にレビューが多い「ダメ」なもの、というのは存在するのでしょうか。こちらは縦軸にレビュー数、横軸に評価をとったグラフです。
これを見るとレビューの数が多いほど評価が3.5に近づいています。たくさんレビューされるものは、実際の中身はともかくとして極端な低評価にはならないのです。これはひろく普及するものにはそれなりに価値があるからで、そうでなければ評価がつくまえに消えてしまうのです。
また、グラフの形が中央からやや右寄りになっています。これもネットのレビューでは「肯定的」なものが多くなるのを示しています。
「いやそれはおかしい。現にTwitterやネットの掲示板では毎日のように『ユーザーの怒りの声』を見るぞ」と、実感とのズレを感じている人もいるかもしれません。しかしインターネット上にはTwitterやネットの掲示板を使っていない人のほうがはるかに多いので、全体を見るとこうなってしまうのです。
なぜ「よくないね!」ボタンがないのか、はこれらの結果から見えてきます。
そもそも低質なコンテンツには、低い評価をつけるよりも無視する人が多いこと。また、たくさん人目に触れるほど低い評価は目立たなくなること。この2点からわざわざサイト上のスペースを割いて「よくないね!」ボタンをつける意味がないから、というのが理由なのですね。
逆に「ネットではプラスの評価に偏る」「ダメなものは評価がつかない」「いいものは評価そのものの数が多い」ということを頭に入れておくと、様々なレビューを読むときに役に立ちます。
特に悪評の読み方は変わってきます。無視するのが普通なのに、わざわざ低い評価をつける。よっぽど強い意志があるか、あるいはムリがあるのかのどちらかです。
実際悪いレビューのほとんどは「自分には合っていない」という非常に主観的なものか、さもなければ詭弁や「いちゃもん」、あるいは故意に貶めようとするイタズラ目的のもので、価値のあるもの・客観的なものはあまり多くありません。
ズバッと斬り捨てる「カラクチ」なレビューは、ネットでは盛り上がるウケのいいコンテンツです。しかし自分の力量や見識がバレてしまう諸刃の剣でもあります。評価しているつもりで評価されていることをいつも忘れたくないものですね。
ソース:Why you can’t dislike something on Facebook
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