科学と技術

80年前の「新幹線」、プロペラ推進式の超高速鉄道「シーネンツェッペリン」


大量・高速に輸送ができる鉄道がどこまで高速化できるのか、という競争は蒸気機関の昔から電気・ジェットに至る現在までさかんに行われてきました。中でもこの「シーネンツェッペリン」は、ガソリンエンジンでプロペラ駆動するという、進化の枝の先っちょまでいってしまったモデルとなっています。


シーネンツェッペリンは、1930年代初頭のドイツで1両だけ試作された高速鉄道車両。当時人気の高かったツェッペリン飛行船にちなみ「レール上のツェッペリン」という意味の名前がつけられました。英語圏では「レールツェッペリン」と呼ばれることもあるようです。

1929年にドイツの航空機技術者フランツ・クルッケンベルクが設計し、1930年初頭に1両のみ試作された車両後部のプロペラで推進力を得て走る鉄道車両・シーネンツェッペリン(レールツェッペリン)の紹介です。名称は当時人気の高かったツェッペリン飛行船にちなんでいます。

名前だけでなく構造も電車というよりは飛行機に近いもの。ドイツの航空機技術者フランツ・クルッケンベルクが設計したボディはフレームにアルミを貼り付ける方式で、動力も後ろ向きに取り付けられた推進式のプロペラをガソリンエンジンで回すというもの。相当な速度が出たようで、1931年5月に200km/h、6月には230km/hの鉄道世界速度記録を達成しており、これは現在でも破られていません。

しかしながら、混雑する駅に巨大プロペラを装着した列車が入ってくるのはどうなのか、という安全性に関する疑問が持ち上がったり、構造上他の車両を引っ張るのは難しそうだ、ということで試作は1両だけで計画中止。1939年に車両に使用されている金属をドイツ軍が必要としたためスクラップとなってしまいました。

後部からみたシーネンツェッペリン。隣の機関車のようなフォルムがメジャーだった時代にあってはまさに異形の鉄道車両であったと思われます。

前方から見ると、なんとなく新幹線0系のようなフォルムをしています。

真横から見たところ。全長は25.85 メートル、全高は2.8 メートルの車両です。

走行中のシーネンツェッペリン

見物人が集まるのも分かりますね。

でもこれだとプロペラが回転カッターと化してすべてをなぎ倒していくという事故は避けられないんじゃないかな……と思います。

前方上部から。こちらから見るとリニアモーターカーを彷彿とさせます。

発進

とにかく見物客が多く、とても注目されていたことがわかります

手を振る見物客たち

軽量化のため、航空機スタイルで製作されています。また、初期は4枚羽を採用していたとのこと。後に2枚羽に変更されました。

初めてのテスト走行時の動画です。

高速で走行している動画はこちら。

ソース:Schienenzeppelin – Wikipedia, the free encyclopedia

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