アートとデザイン

どんどん「政治的に正しく」なっていった絵本「The Best Word Book Ever」


「スチュワーデス」を「キャビンアテンダント」としたり、「痴呆症」を「認知症」と言い換えたりなどして、差別や偏見を取り去った文章を「政治的に正しい(ポリティカリー・コレクト)」と言います。この思想のもと、1963年に出版された児童向け絵本が1991年にどのように修正されたか見てみましょう。


左が1963年版、右が1991年版。「彼は朝食に呼ばれるとすぐに向かいます」→「彼は朝食を食べにキッチンに向かいます」と表現が易しくなりました。また「promptly=ただちに、速やかに」という表現をやめ子どもの人権に配慮したような印象も受けます。

「水の中にあって、ボートの行き先を示すものはなんでしょう?」という文ですが、こちらもやや平易な表現になりました。またネズミの頭やカヌーに注目。ネイティブ・アメリカンを思わせる表現が変更されています。

下が新版。「Cone」が追加され、こちらもネイティブ・アメリカン風のネズミが消えました。

性差に関する表現にはかなり手が入れられたようです。新版(右)では炊事にお父さんが参加しました。

旧版(上)では「Handsome pilot(ハンサムなパイロット)」「pretty stewardess(かわいいスチュワーデス)」ですが、それぞれ「pilot」「flight attendant」と変更に。

manの書き換えはよく聞きます。旧版(左)では「fireman(消防士)」なのが「fire fighter」に。また窓から顔を出すネコが「beautiful screaming lady(叫ぶ美しい女性)」から「cat in danger(危険な目にあうネコ)」となっています。叫ぶのは美しい人だけでもなければ女性だけでもありませんから。

土木や重いものをもつ仕事は男性だけのものではない、ということでリボンが追加されたキャラ達。

歯科医がサイの男性(?)からクマの女性に。また主従関係を思わせる描写もアウトということで、新版では歯科衛生士は、助手だけではなく衛生指導も行なうという説明が追加になりました。

かなり細かい絵ですが旧版(上)では女子のグループで遊んでいる中に男子が混じったり、追いかけっこが男女逆になっていたりしています。ビー玉や手まりつきも男女が入れ替わっていますね。

「男らしさ」「女らしさ」という先入観はアウト、というのがポリティカル・コレクトネスの世界なので、職業についても色々な変更があります。また時代の変化から入れ替えられたと思われるものもいくつか見られます。

「Policeman(警察官)」が「Police officer」に。カウボーイが姿を消しました。ミュージシャンの楽器がクラリネットからシンバルに+変わってしまったのはなんでなのでしょうか……。

クリスマスは宗教行事なので人によってはかなり気にします。新版(下)ではクリスマスと同時期に行なわれるユダヤ教のお祭り、ハヌカーで使われる燭台が足されたようです。

こういうポリティカル・コレクトネスの世界というのはちょっとよく分からない部分があります。例えば「子供」と書いて嫌な思いをするのはどんな人でどれくらいいるのでしょうか。実際の所、「差別だ」と周りが言ってるから差別だ、という人しか会ったことがないのです。

例えば通信簿のコメント欄の「騒がしい」→「活動的だ」といったような、相手を傷つけないようやんわりと言い換える表現は昔からあって、ショックを与えず現実を表現したいという難しい状況ではよく使われてきました。これは受け取る相手の顔がなんとなく思い浮かぶからですが、ポリティカル・コレクトネスの世界ではこの相手が誰なのか時々分からないことがあります。

書き手の責任が問われることは多々ありますが、双方向メディアが当たり前となった現代、今後は「差別だ」「偏見だ」「問題発言だ」と騒ぐ人が「誰にとって」をきちんと説明するという責任もクローズアップされていくと思われます。

ソース:The Best Word Book Ever,1963 and 1991. – a set on Flickr

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