科学と技術

中世の騎士の甲冑を完全に再現し本当に戦闘可能だったのかを検証した動画

2014.10.07 23:52 by wakaba

中世ヨーロッパの騎士たちが装着していたプレートアーマーやその当時に書き記された西洋剣術の指南書は現在でもたくさん残されており、当時のヨーロッパで繰り広げられていた戦闘の様子を伺い知ることが出来ます。しかし、誰も見たことがない記録にある戦闘が金属製の鎧に身を包んだ騎士に本当に可能だったのかと疑問に感じることころ。そこで、フランスの新聞社と美術館が共同でこの疑問を検証すべく当時の戦闘を完全再現しています。

「15世紀における装甲戦闘：Le combat en armure au XVe siècle」と題されたこの映像は、フランスの日刊紙「フィガロ」とフランス・パリにある貴婦人と一角獣で有名なクリュニー美術館（国立中世美術館）が共同制作したものです。

動画はこちらから。
Le combat en armure au XVe siècle – YouTube

まずは、基本となるプレートアーマーを思っきり両手剣で斬りつけてみる検証。これは全く問題なし。

次にプレートアーマー着用時にどれくらい自由に動くことが出来ていたのかの検証です。

「プレートアーマー着用時の可動性検証：La mobilité en armure」

はしごを使って城に攻め入る騎士たちが描かれた「紀元前219年にスペインのサグントで起こった戦争を描いた15世紀のイラスト(Illustration du siège de sagonte, XVe siècle)」を検証します。

はしごの昇り降りくらいの動作は全く問題ないようです

2つ目のイラストは「マケドニアとインドの戦闘を描いた15世紀のイラスト(Illustration du combat entre Macedoniens et Indiens, XVe siècle)」。様々な動きをした騎士たちが描かれています。

寝転がった状態から起き上がる動作

飛んだりはねたり転がったりも可能です

プレートアーマーを着用していてもかなり自由に動き回れることがわかりました。次は実際の戦闘についての検証です。

プレートアーマー着用時の戦闘の方法：les étapes du combat en armure

プレートアーマーを装着した中世の騎士の戦闘には5つの段階がありました。まずは、直接攻撃、次に戦闘技術を使った攻撃、パワー攻撃、格闘（接近戦）、最後に寝技です。この5つの段階を順次検証しています。

1. 直接攻撃 : porter un coup direct

「Ludwig von EYB zum Hartenstein, 1500」

イラストに描かれた「剣で目を突く」攻撃を再現

2. 戦闘技術を使った攻撃 : executer une technique

16世紀初頭ドイツの剣術家「イェルク・ヴィルハルム（Jörg Wilhalm）」が残した武術書。1522年。

敵を押し下げるテクニックを再現

3. パワー攻撃 : Passer en force

イェルク・ヴィルハルム（Jörg Wilhalm）。1556年

戦場で敵をぶっ飛ばす方法を再現

4. 格闘（接近戦）： Lutter(corps à corps)

ドイツの剣術家「パウルス・カール（Paulus Kal）」。1460年。

力ではなく格闘術で敵を地面に押し倒しています

5. 寝技： Combat au sol(immobiliser ou achever)

15世紀半ばにドイツで著された武術書「グラディアトリア（Gladiatoria）」。 1430年。

地面に倒した敵を最終的に仕留める技の再現

ある実験では中世ヨーロッパの騎士が戦闘時に着用していたプレートアーマーはあまり役に立たなかった可能性が示唆されているように、15世紀のプレートアーマーは重いものでは50kg近くあり持久戦は非常に不向きとされています。しかし、動作の基本となる関節が制限されることも無く、両手剣で斬りつけられてもびくともしない頑丈さは、強靭な肉体を持った騎士であれば非常に効果的に着こなすことが可能だったのではないでしょうか。