「パシフィック・リムが中国を侮辱している」という報道に対して中国のネットユーザーはどう反応したか

2013.09.26 07:31 by chaka

巨大ロボットが巨大カイジュウを倒す空前絶後のアクション映画「パシフィック・リム」が世界で一番見られたのは中国で、その興行収入は1億1千万ドル（約100億円）という巨大なもの。その中国で先日「パシフィック・リムは中国を侮辱するアメリカのプロパガンダ」という報道が出たのですが、中国のファンはどのように反応したのでしょうか。

話題の発端となったのは、中国・人民解放軍の広報誌「中国军网」が「パシフィック・リム～平和はやってこない」というタイトルで掲載した手記です。

抜粋すると：

・同作はアメリカの太平洋での戦略を投影したもの。
・またアメリカ人と日本人のコンビが日米関係を想起させる
・中国人が食用・装飾用にカイジュウの肉を使っているというステレオタイプな描写

・アメリカ映画は中国から大量の資金を吸い上げている
・その上、中国の若者にアメリカ的価値観をうえつけている

・わが軍の士官・兵は思想の防火壁となるべきだ
・アメリカ映画を色々な方向から学ばなければならない
・そして国家の尊厳と主権を守れるよう、力をつけるべきだ

となります。これを中国最大のポータルサイト「搜狐」が「パシフィック・リムは中国を貶め、日米同盟を想起させる」というタイトルで掲載したところ閲覧約12万回、コメント約4000件という量のコメントが付きました。

日本では中国批判、韓国批判のコンテンツには愛国的なコメントがたくさんつくもの。おそらく尖閣諸島問題や従軍慰安婦、南京大虐殺などに絡めた過激なコメントが大量に掲載されているのだろう、と思って見てみたのですが思った以上に冷静で拍子抜けするほどでした。

大半はこのようなコメントでした：

たかがポップコーン・ムービーだろ

映画を撮って意見を言うだけで罪になるわけがないだろ

軍をなじるものもそれなりの数が見られました：

軍新聞は敵の倒し方を研究せずに子ども向け映画にコメントをして、しかも自分を正当化している。毎日何やってるんだ？何歳になったんだ？

たとえそれが本当だとしてもどうするんだ？軍を変えられるのか？国への忠誠を歌う以外に何ができるんだ？軍の宣伝局は中国独自の社会主義で大作映画が作れるっていうの？そんなわけないよな、じゃあなんでいつまでもナンセンスなこと言ってるの？軍の求人広告は毎年つまらないしイマジネーションも創造力もない制作者をやとってるんだろう。カネがないなんて文句言うなよ。不正やってる高官を何人か捕まえれば十分手に入るだろ。っていうか俺を雇ってやらせてみろよ。

アメリカ批判は多く見られました：

悪いアメリカ人め！いつも世界を救うふりをしてるくせに、世の中がよくなったためしがないぞ

まぁアメリカってのはいつも世界を支配したがるもんだしな

日本の歴史認識がどうこう、という投稿はあるのですが、1つ1つが短く感情的なものであまり支持を得ているという感じは受けませんでした。「（憲法改正について）ナチスの手口に学ばなければならない」と述べた麻生副総理についても、もっとコメントされるかと思ったのですが、ほぼ見られませんでした。

おそらくこれが中国人のメジャーな意見ではないでしょうか：

中国军网が言い過ぎだとは思わない。私も映画をみたけど同じように思った。中国とロシアのイェーガーは何もできないままあっという間に負けてしまったし、結局アメリカ人と日本人が協力して世界を救ってしまった。
でもあれはアメリカ人が作った映画だから自分たちをよく見せたいのは理解できる。少なくとも中国人が敵キャラじゃないだけで十分だよ。それでも不満ならあれを超える映画を自分たちで作って、世界の人たちに中国人の考え方を伝えないと。それが正しいやりかただと思う。

中国メディアは日本批判・アメリカ批判であふれている！といわれています。上のコメントは「ネットの意見」であり、現実社会を反映しているものかどうかは分かりませんが、しかし、この記事を読む限りではそうした批判記事というのは「炎上狙い」であり、決して主要な論調のように受け取ることはできませんでした。

実際の思惑がどうなのかは分かりませんが「パシフィック・リム」をめぐる対立は、対立があってほしいと思う人の心の中にだけしか存在しないのではないでしょうか。対立があるように見せたほうが話題性はあるのは分かりますが、それにうんざりしている人はたくさんいるのです。

（おまけ）
なお、常に誰かが陰謀を張り巡らしているのが見えてしまう人のやることは日本でも中国でも変わりがないようです。