米ホンダ、アメリカ国内の「ドライブイン・シアター」保存キャンペーンを支援
車に乗ったまま映画を楽しめる「ドライブインシアター」は多くのアメリカ人にとって青春のシンボルなのですが、これが現在絶滅しかけています。この保存キャンペーンにホンダが協力しています。
ドライブインシアターは文字通り、広い駐車場に巨大なスクリーンを置き、車の中から映画を見るというシステムの映画館です。音は駐車スペースに立てられた小型スピーカーや、後年はカーラジオに流して聞くシステムとなっていました。
誕生は1930年代中ごろのアメリカ。テレビのない時代、映像コンテンツを楽しむには映画館に出かける必要がありましたが、子どもがいる家庭ではそう簡単に家を空けることができません。ドライブインシアターなら車に乗ったまま映画を見られるため、子どもが騒いでも周りの観客を気にする必要がなく、特に当時の家族連れにとっては主流の楽しみであったようです。
誰もが自動車を乗り回すようになる50年代~60年代末には、ティーンエイジャーのカップルにとっても人気の娯楽になりました。薄闇のドライブインシアター、密室の車内で映画そっちのけ……という当時の若者の様子は、コニー・フランシスの大ヒットナンバー「ヴァケーション」の歌詞にも登場します。
「ボロ車でドライブインシアターに行くわ、でも映画なんか見ないのよ(we’ll hop in a jalopy to a drive-in movie and never look at the show)」という62年の歌謡曲。
Connie Landers – “Vacation” – YouTube
しかし、近年ドライブインシアターは減少の一途であり、現在は全米に368か所しかありません。残存しているものも経営は苦しく、特に2014年からはデジタル配信になるため、非常に高価なデジタル映写機を導入できないところは閉鎖せざるを得なくなります。
ドライブインシアターはアメリカの映画文化、そして自動車文化の歴史の重要な1ページです。これをなんとか後世に残すべくホンダは「Project Drive-In」を立ち上げ、キャンペーンを展開しています。
ホンダからは5台のデジタル映写機が提供されることになっており、これらがどのシアターに導入されるかについてWeb投票を行うなど、ネットでの露出を高める運動が展開されています。
プロモーション動画はこちらから。
Honda “Project Drive-in” — RPA/Santa Monica – YouTube
絵や写真、文章、映画はどのようなメディアに乗せられるかでその印象を大きく変化させます。それがゆえに写真家は絵を焼き付ける印画紙や印刷機にこだわりますし、映画の歴史はスクリーンサイズの歴史といってもいいほどである、というのは以前もご紹介したとおり。ドライブインシアターがなくなるというのは、コンテンツ業界の収益構造の変化という話にとどまらず、映画を作る人たちの表現の手段が一つ失われるということにもなります。
紙の書籍や映画館は不要論が出始めて久しいですが、表現の一形態として守る方法を考えていくべきではないでしょうか。
トップ画像:Last Picture Show Drive-In Theater | Flickr – Photo Sharing!
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