アートとデザイン

難民キャンプの人々に最も大切な物を見せてもらったモノクロ写真集「The Most Important Thing」


「もし、今すぐに国を追われることになったら何を持っていくのか?」と問われての即答は難しいもの。しかし、紛争や災害など理由により長年住み慣れた所を離れることを余儀なくされ、比較的安全な近隣の国や地域に建設された難民キャンプで生活している難民は全世界に1000万人以上存在しています。

現在でも内戦や紛争が続く中東・シリアとアフリカ・南スーダンの2カ国の人々が、自分の国から持ってきた最も大切にしているものを見せてもらったモノクロのポートレート集「The Most Important Thing」です。100歳を越えた老人からまだ何も知らない子どもまで多くの難民が見せてくれる最も大切な物は非常に心に訴えかけるものがあります。

この写真集「The Most Important Thing」は、国連の難民問題に関する機関「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)」のサポートで写真ジャーナリスト Brian Sokol 氏が撮影したものです。

南スーダン人難民キャンプ

2011年7月9日に誕生した最新の国家「南スーダン共和国」とスーダンでは、国境境界部の油田地帯を中心に国境紛争が発生しており、国境地域に住んでいた住民の多くが難民となりキャンプ地へ非難している状態が続いています。

1. Omar(60?70歳)。最も大切な物は「斧」。料理に使う薪を割ったり、夜寝る場所や休憩する場所を作ったりしています。

2. Maria(10歳)。最も大切な物は「燃料容器(ジェリカン)」。水を汲むのに使用しています。

3. Howard(21歳)。最も大切な物は「長剣(shefe)」。妻と6人の子ども、そして南スーダンの国境から連れてきた20匹の牛を守るために所持しているものです。

4. Torjam Alamin(85歳)。最も大切な物は「2本のペットボトル」。1本は飲料水用、残りの1本は調理油用に使用しています。「私が運ぶことができるのはこのペットボトルと1本の斧だけです」とのこと。

5. Hasan(60?70歳)。最も大切な物は「何も入っていない財布」。家を出た時には家族が十分に1ヶ月生活出来るお金が入っていました。

6. Ahmed(10歳)。最も大切な物は「ペットの猿」。かつて住んでいた村から5日間トラックの荷台に一緒に乗って難民キャンプにやってきました。

7. Dowla(22歳)。最も大切な物は「人力運搬用の天秤」。難民キャンプへ向かう旅で疲れ果てた6人の子どものうちの2人をこの天秤で担いできたそうです。

8. Shari(盲目の母、75歳)とOsman(息子、40歳)。最も大切な物は「盲目の母親を先導するための棒」。「6年前から使用しているこの棒が無ければ今はもう死んでいただろう」とShariは語っています。

9. Al Haj(27歳)。最も大切な物は「ムチ」。かつて50頭のヤギを持っていた時に使用していたものです。

10. Magboola(20歳)と3人の娘たち。最も大切な物は「調理用なべ」。3人の娘たちの食事を作るのにとても大事なものです。

その他南スーダンの難民キャンプで撮影された写真はこちらのリンクから見ることができます。
The Most Important Thing – a set on Flickr

シリア人難民キャンプ

シリアは20111年のチュニジア・ジャスミン革命の影響により、2011年1月から現在までシリア政府軍と反体制派による内戦が続いている状態。首都ダマスカスなどから追われた人々はイラクやレバノン、トルコなどの近隣の国へ難民として避難しており、現在でも多く人が難民キャンプでの生活を余儀なくされています。

11. Omar(37歳)。最も大切な物は「ブズク(楽器)」。「ブズクを弾くことでノスタルジアに満たされ、故郷を思い出させてくれます。少しの間だけ、悲しみから開放されます。」とのこと。

12. Salma(90?107歳)。最も大切な物は「指輪」。母が亡くなった10歳の時、ベッドの母から譲り受けたもの。「この指輪は銀や金などで作られた高価なものではありません。ただの古いだけの指輪です。でも私に残された全てなのです。」と語っています。

13. Tamara(20歳)。最も大切な物は「卒業証書」。避難地のトルコの大学に編入し勉強しつけることを可能としてくれるためとても大切なものです。

14. Ayman(夫、82歳)とYasmine(妻、67歳)。最も大切な物は「妻」。「妻は人生で出会った中で最高の女性。もし55歳に若返ったとしても、また彼女を選ぶと思います」とのこと。

15. Yusuf。最も大切な物は「携帯電話」。避難地のレバノンからたまに繋がる携帯電話からシリアにいる父親に連絡が出来るため非常に大切なもの。また、以前にシリアで携帯電話で撮影した写真も今では宝物です。

16. Leila(9歳)。最も大切な物は「ジーパン」。いつも買い物の時は悩んでしまうのですが、この花がらのジーパンは見た瞬間に購入したほどのお気に入り。しかし、今までたった3回しか着たことが無いとのこと。(2回は結婚式、残りの1回はおじいちゃん家に行った時)。そして、今度結婚式に参加するまでは着ないと心に決めているそうです。出来ればシリアで着たいとのこと。

17. Ahmed(70歳)。最も大切な物は「籐製のステッキ」。Ahmed氏は「もし、このステッキが無かったら国境を越えることすら出来なかった。私が望むことは家族が安全な場所を見つけ、末永く安全に暮らせることのみです。」と語っています。

18. May(8歳)。最も大切な物は「ブレスレット」。でも本当はブレスレットはあまり好きではなく、6歳の時に叔母にもらった人形のナンシーがお気に入り。しかし、その人形はもうどこにも無いため、2番目にお気に入りのブレスレットを見せてくれました。

19. Iman(25歳)とAhmed(息子、2歳)、Aishia(娘、1歳)。最も大切な物は「コーラン」。宗教は彼女の人生においてとても重要な位置を占めています。

その他、シリアの難民キャンプで撮影された写真はこちらのリンクから見ることができます。
The Most Important Thing: Syrian Refugees – a set on Flickr

これらの写真はニューヨークの写真ジャーナリスト Brian Sokol 氏の作品です。

ソース:UNHCR – Photo Gallery – The Most Important Thing

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