想像力は無限大、奇妙な研究が受賞する「イグ・ノーベル賞」2012年の受賞一覧
イグ・ノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られるもの。一見何の役に立つのかよく分からないけど実は深い意味があったり、権威に対してガツンと皮肉をくれたりと、今年もユニークな研究が集まりました。
心理学賞:
「左に傾いてたつとエッフェル塔が低く感じるという発見について」
(Leaning to the Left Makes the Eiffel Tower Seem Smaller: Posture-Modulated Estimation)
ある姿勢をとらせることで人の心理をコントロールできる、という発見。タイトルは面白いですが結構怖い発見です。
平和賞:
「旧ソ連の古い弾薬をダイヤモンドに転換する技術の発見について」
(converting old Russian ammunition into new diamonds)
高性能爆薬をチェンバーで爆発させると高圧でダイヤモンド状の粉末「Nano-Diamond」が生まれます。工作機械のカッターなどに使われる材料でもあり、古い弾薬を転用できるという素晴らしいアイディアです。
音響賞:
「他人をしゃべれなくしてしまうSpeechJammerの開発について」
(SpeechJammer: A System Utilizing Artificial Speech Disturbance with Delayed Auditory Feedback)
日本からは産業技術総合研究所で開発された発話阻害装置「SpeechJammer」の開発チームが受賞。数百ミリ秒遅れた自分の声を聞かせるとなぜか話せなくなってしまうという不思議な現象を利用しています。
神経科学賞
「脳科学者が複雑な機械と単純な統計を使って死んだサケの脳活動すら計測できるという発見について」
(Neural correlates of interspecies perspective taking in the post-mortem Atlantic Salmon: An argument for multiple comparisons correction)
MRIで脳などの複雑な構造を検査する際、センサーに発生するノイズによる誤検出を統計的に証明したという研究。これは結構まじめです。
化学賞:
「スウェーデン・アンデルスロブにある一部の家の住人の髪の毛がなぜ緑色になってしまったのかを解明した研究について」
(solving the puzzle of why, in certain houses in the town of Anderslov, Sweden, people’s hair turned green)
新築の家に引っ越した人がシャワーを浴びると、なぜか髪の毛が緑色になってしまう事態が多発。原因は熱いシャワーで水道管の銅が溶け出したことによるものでした。ホラーです。
文学賞:
「アメリカ合衆国会計検査院の、レポートに関するレポートに関するレポート、に関するレポートを準備することを推奨するレポート、に関するレポートに関するレポート、を発行した功績について」
(The US Government General Accountability Office, for issuing a report about reports about reports that recommends the preparation of a report about the report about reports about reports.)
いわゆる「お役所作文」をDisった研究。「レポートと研究に関するコストを予想する努力が与えるインパクトを評価する活動が必要になる(Actions Needed to Evaluate the Impact of Efforts to Estimate Costs of Reports and Studies)」という具体的にはいったい何をしたらいいのか分からない文章が対象となりました。
物理学賞:
「ポニーテールの髪型に形と動きを与える力のバランスを計算したことについて」
(Shape of a Ponytail and the Statistical Physics of Hair Fiber Bundles)
なんとなく人間の業の深さを感じる研究です。
流体力学賞:
「液体のチャプチャプ挙動を研究し、コーヒーを歩いて運ぶと何が起こるのかを解明したことについて」
(Walking With Coffee: Why Does It Spill?)
一見学生の自由研究のようなタイトルですが、カップの動き、人間の生理的な動き、そしてコーヒーという流体の挙動の3つを同時に解決するという非常に高度な研究となっております。タイトルって大事ですね。
解剖学賞:
「チンパンジーはお尻の写真で性別を判別することができるという発見について」
(Faces and Behinds: Chimpanzee Sex Perception)
チンパンジーお尻で個体を判別したり、性別を見分けたりできるのだそうです。社会性や認知能力に関する大きな発見となります。
医学賞:
「結腸内視鏡検査を行う医師に、どうしたら患者が爆発しなくてすむかアドバイスしたことについて」
(Colonic Gas Explosion During Therapeutic Colonoscopy with Electrocautery)
腸内のおならに検査器具から発生する火花が引火して爆発するという痛ましい事故を防ぐアドバイスについて賞が送られました。
関連記事
「変な研究」の頂上を選ぶ「イグ・ノーベル賞」2011年の受賞一覧 - DNA
米国防総省高等研究計画局DARPAからの挑戦「シュレッダーにかけられた文書を復元できたら賞金5万ドル」 - DNA
なぜ「どうみてもバレバレ」なスパムメールが有効なのか、マイクロソフトの研究者が明らかに - DNA
周波数帯一気に2倍、同じ周波数の電波で同時に送受信する技術をスタンフォード大学の研究者が開発 - DNA
あと5年でアメリカ軍から核実験に参加したことがある技術者がいなくなってしまう - DNA
移動履歴を収集して「次に向かうであろう場所」が予測できるアルゴリズムが開発される - DNA
犬は実際に落ち込んでいる人をなぐさめる習性があることが判明 - DNA