普通のバイオリンを「ストラディバリウス」に近づける特殊な胞子
バイオリンの音の良し悪しは何で決まるのかについては、あらゆる面から研究されていますが、そのうちの「材料」について面白い試みが続いています。一般的な木材を改質し「ストラディバリウス」に近づけてしまう胞子の研究がスイスで行われています。
スイス国立材料工学研究所のフランシス・シュワルツェ教授が研究しているのはバイオリンに使用される木材。
名器と呼ばれるストラディバリウスやグァルネリなどがあります。これらがなぜいい音になるのか?という要因は様々な角度から研究されていますが、シュワルツェ教授が注目しているのは1645年から1715年の寒冷な時代に育った木を使っているという点。
夏と冬の温度の差が小さいことで育ち方が均質で粗密が少なく、弾性にも富むという理想的な木材なのですが、この性質を再現するためにシュワルツェ教授は一般的な木材を特殊な胞子で処理することを発見しました。
エチレンを通した特殊な胞子で9ヶ月間処理することで、木材の細胞壁を劣化させるのが主なポイント。音質に関する部分への影響を少なくするよう胞子をコントロールすることでストラディバリウスに使われている木材とほぼ同じ性質を再現することに成功しています。
こうして処理された木材を使ったバイオリンと、1711年製のストラディバリウスを比較したブラインドテストが2009年に行われていますが、プロの審査員2人は判別することができなかったという記録が残っています。。
教授は胞子による改質をより一定にすべく研究を進めるとしており、今後30台を製作してテストを続けていくそうです。より性能のよい楽器をより安価に手に入れられるというのは、勉強を始める初心者にとってはとてもよいニュースとなるでしょう。
またピアノや管楽器、ギターなど木材を使う楽器はたくさんありますが、家具やライフルの銃床など他の分野とも競合するため、楽器に適した木材は現在「奪い合い」と言っても過言ではない状態。こうした改質技術が確立することで、よりよい楽器を、より少ない環境負荷で手に入れることができるというのは音楽界にとっては素晴らしいことです。
ソース:Treatment with fungi makes a modern violin sound like a Stradivarius
Violin Making: An Illustrated Guide for the Amateur
Violin-Making: A Historical and Practical Guide (Dover Books on Music)
Violin Making: A Practical Guide
The Art of Violin Making
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