ヒトラーの夜間警護専用、銃身下にフラッシュライトを搭載したルガー・P08
「タクティカル」なイメージを漂わせるのに必須といえるアイテムといえば銃身にぶら下げるフラッシュライト。これがいったいいつ頃に生まれたデバイスなのかは定かではありませんが、ナチス・ドイツ時代にはまさしくこの通りのアンダーバレル・フラッシュライト付ルガー・P08が一部の特殊な任務において使われていたようです。
このルガーは2012年4月にRock Island Auctionで競売にかけられたもの。
元々はドイツに進駐したアメリカ軍の兵士が国に持ち帰ったもので、その兵士からDick Anderson氏が購入。その後北米のルガー・コレクターとして知られるDoug Smith氏の手に渡り、2008年の3月にJames D. Juliaオークションで競売にかかります。それから約4年、再び世の中に出てきました。
確認されているのはこの個体を含めてわずか2丁。残りの1丁はミュンヘンのドイツ博物館に収蔵されており、個人の手にあるのはこの1丁という珍品っぷり。
ルガーはアンティーク拳銃の中でも人気があって、程度やタイプによって差はありますがWWII当時のものの価格はだいたい2000ドルから6000ドル(約16~49万円)、高くても1万ドル強といったところ。しかしこの「ナイト・ルガー」は18万4千ドル(約1450万円)という価格で落札されており、その貴重さが伺えるというものです。
ルガーとフラッシュライト。
真鍮削り出しにアノダイズ処理した本体。銃本体とフラッシュライトをつなぐ電線は残念ながら欠品です。
フラッシュライトの尾部とトリガー上部の真鍮ソケットが電線でつながり、グリップの真鍮プレートを握ると導通してフラッシュライトがつくという仕組みでした。
上面。フラッシュライトの後端から伸びた「耳」がボディの左右を掴んでいるのが分かります。
正面から。それほどの光量はなかったのではないでしょうか。
フラッシュライト本体。
クルミ材のグリップ。
裏側はこうなっています。
ホルスターも同時に出品。フラッシュライトは別のケースに入れて持ち運んでいたようです。
このホルスターも特殊なタイプのもの。
このように大きく開くようになっており、グリップを素早くつかむことができました。まだ拳銃が将官の象徴というイメージが強かった時代のものだけに、戦闘的な作りが意外です。
ペーター・ホフマンの研究本「Hitler’s Personal Security」によれば、この拳銃はヒトラー個人を警護するための国家機関、RSDの隊員が携行したもの。総統大本営におけるヒトラーの掩蔽壕を守るRSD隊員が夜間に曳光弾が装填して使ったそうです。
現在なら暗い倉庫などを捜索したり目つぶしに使ったりというところですが、そこまでの明るさは期待できないようなサイズ。グリップを握っている間は常時点灯ということで点滅信号にも使いにくい……どういう使い方をしたのか気になります。
こうした「ウェポン・ライト」は終戦後から増えてきましたが、このルガーがそのモデルとなっているかもしれないと思うとなかなか興味深いものがありますね。
朝鮮戦争で一部に採用されていたM3カービン。巨大な赤外線投光器と暗視スコープを載せています。
ファイル:M3 Sniperscope.jpg – Wikipedia
1956年に申請された銃身にライトを固定する金具の特許。ニーズはあったようですね。
Patent US2769895 – FLASHLIGHT SUPPORT FOR FIREARMS – Google Patents
現在の形というか用途で見られるようになったのは、対テロ部隊が創設され始めた70年代後半でしょうか。これは80年の駐英イラン大使館占拠事件の時の写真。当時のテロ対策部隊の写真には、1番下の隊員のように巨大な「マグライト」を装着した短機関銃がよく写っています。
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