交通違反をした物理学者、論文で数学的に自分の無罪を証明
交通違反というのは結局のところ警察官の主観が決め手になるため、そのジャッジがしばしば問題になります。私達一般人にはその判断に逆らう術がないのですが、維持でも違反キップをきられないようにするために論文で抵抗した物理学者が現れました。
一時停止違反の疑いをかけられたのはカリフォルニア大学サンディエゴ校の物理学者、ドミトリ・クリオウコフ博士。その日運悪く風邪をひいていた彼は一時停止はしたものの、くしゃみのせいで急ブレーキ・急加速となっていまい、見ていた警察官は停止しなかったように誤認してしまいました。
違反切符を切ろうとする警察官に対し、間違いを主張し続けた彼の容疑は、とうとう裁判所で判断されることに。そしてその場で博士は「無罪の証明」と題する論文を提出し、見事無罪を勝ち取ったのです。
論文の骨子は以下のようなもの。
もし以下の仮定が成立するとすれば、観察者である警察官からは自動車が停止しなかったように見えるはずである。
1: 観察者は線形速度ではなくて角速度を計測した
2: 自動車が急ブレーキでとまり、急発進した
3: 他の自動車によって観察者の視界が一瞬妨げられた
道路の脇に立って走ってくる自動車を眺めた場合、遠くにいるほどゆっくりに、近くにくるほど速く走っているように見えます。
もしこの時、急ブレーキをかけ、その後急加速をするとどうなるか。速度が変化した時間は非常に短くなり、止まらずに等速で走りぬけたのと同じように見えるでしょう。
横軸を時間、縦軸を角速度としたグラフ。0秒の時点が停止信号に当たります。左は等速で走りぬけた場合、右は0秒で速度もゼロになるよう、減速度をいろいろ変化させた場合のグラフ。
その日のクリオウコフ博士の自動車はまさに右側の青色のグラフのようになり、左側のグラフと非常に似た形になってしまいました。
もちろん通常なら、そんな急激な変化は観察者の目に止まるものです。しかし、止まった瞬間、他の車が観察者の視線をさえぎっていたとしたら……まさしく赤信号で停止しなかったように誤認してしまうのではないでしょうか。
クリオウコフ博士は法廷でこのように述べ、これには警察官も裁判官も納得せざるを得なかったそうです。
博士はこの結果を詳細な数式を含む論文にまとめ、コーネル大学のオンライン論文サーバーarXivにアップ。論文のアブストラクト(概要)には誇らしげにこう書かれています。
違反切符と戦う方法。この論文はカリフォルニア州の違反金を免れた分の400ドル(約3万3千円)を賞として得た
例え何が起ころうとも卑屈になることなく正々堂々と無実を証明する、これは科学だけでなくあらゆる学問分野で重要な姿勢です
しかし一時停止ではもうちょっとしっかり時間をかけて止まっておけば……安全運転も大事です。
ソース:Buzz Blog: Physicist Uses Math to Beat Traffic Ticket
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