5万5千件の調査で判明、「パケット定額制廃止」でも通信量は変わらない
最近よく聞くのが携帯電話各社の設備でのトラブルで通信が止まってしまうという事故。その原因として「通信量の爆発的な増大」があげられることが多く「パケット定額制の廃止」もささやかれることになりました。しかし、既にパケット定額制を廃止しつつある米国での調査で、定額制を廃止しても通信量に影響を与えないことが明らかになりました。
これは通信料金のコンサルティングを行う企業、Validasが5万5千件の料金明細を調べた結果判明したもの。
アメリカの携帯電話キャリア、AT&Tは既にパケット定額制(Unlimited Plan)の新規契約を廃止し、通信が一定量を超えると追加課金されるキャップ制(Tiered Plan)を導入しています。VerizonやT-Mobileといった競合他社も同様の施策を展開しています。
しかし、各社ユーザーのうちトップ5%の人の通信量を見ると、定額制でもキャップ制でもほぼ変化がないことが判明、つまりパケット定額制を廃止したところで「通信量の爆発的な増大」を抑えられるかどうかはかなり怪しいということが分かりました。
携帯電話キャリア、Verizon(左2つ)とAT&T(右2つ)の通信量トップ5%ユーザーの通信量。青は平均値、赤は中央値を表す。UnlimitedとTieredでほぼ通信量に変化がないことが分かります。
通信の快適さには、月あたりの通信量だけでなく時間当たりの基地局のキャパシティも重要な要素で、上の図では後者が考慮されていないのであくまでも参考データにしかなりません。しかし少なくとも「パケット定額制の廃止」だけでは問題の解決にならなさそうなことは分かります。
さらに以下の図はアメリカにおける、1か月あたりの通信量とユーザー数の割合を示したもの。Verizonでは0-50メガバイト、AT&Tでは100-200メガバイトの通信を行っているユーザーが最も多くなります。またどちらも大体8割くらいのユーザーは1GB以下しか通信を行っていません。
日本での具体的な数字は不明ですが、以前、ソフトバンクの孫正義社長は「通信量の半分は5%のユーザーによるもの」と発言、ドコモの山田社長も「1%のヘビーユーザーが全通信量の3分の1を使っている」とコメントするなど、各キャリアとも少数のヘビーユーザーが通信量の大きな割合を占めるという状況は変わらないようです。
要するに、全体の通信量に影響を与えるヘビーユーザーは料金がどうなろうと使うべくして使うため、料金をいじっただけでは大した効果がありません。最近はスマートフォンの普及により、さらに通信量は増える傾向にあります。
通信の快適さ・料金形態の明快さを損なわずに、いかに負荷を分散していくか。Wimax回線の普及やWi-Fiスポットの強化など各社対策が進んでいますが、携帯電話界隈はは大きくビジネスモデルを転換する必要がありそうです。
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