P2P情報サイト「The Pirates Bay」、3Dオブジェクトデータ専門のカテゴリを新設
「ネット上では、デジタルデータは共有できても自動車や時計は共有できない」という当たり前の事実が覆るかもしれません。デジタルデータの共有情報サイト「The Pirates Bay」が、3Dプリンタで出力可能なデータを共有する専門のカテゴリを新設しました。
「The Pirates Bay」に新たに登場した「Physible(物理化可能の意)」コンテンツのカテゴリ。3Dプリンタやスキャナのデータを扱うところです。今のところはフィギュアや車の模型などの形状データが並んでいます。
Other > Physibles – TPB
「The Pirates Bay」では合法・違法を問わず様々なデータの情報を扱っている悪名高いサイト。この動きは最近のファイル共有界隈への取り締まりに対するジョークじみた批判だと考えられますが、結構重要な示唆を含んでいます。
例えばこれで何ができるのかというとあらゆる工業製品をコピーし、国境を越えて共有することが可能になります。運送費も関税もかかりません。極端な話、こういう3Dオブジェクトのデータがたくさん共有されるようになる可能性があります。
3Dプリンタを使って出力するとこんな感じ。
他のパーツが3Dプリンタで出力できないわけがないので、自動小銃のガワが1丁上がりとなります。樹脂製なので発射能力はありませんが、素材の進歩は時間の問題でしょう。
アメリカでは銃火器の通信販売が制限されているので、この画像のような「80% Receiver」という部品が流通していました。これは動作するのに必要なネジや穴が空けられていない半完成品で、銃火器とはみなされず登録も必要ありません。匿名で銃を所有したい人はこういうものを買って自分で仕上げるというマーケットが存在しています。
こうした半完成品の日本への輸入は今のところ税関で物言いがつくと思われますが、3Dデータならインターネットを通じていくらでも「密輸」が可能です。
工業用の高精度な3Dプリンタはさすがに個人で所有するには高価すぎますが、すでにオープンソースの自作できる3Dプリンタはいくらも登場しています。既にDIYサイトでは、火器の3Dプリンタ用データのアップロードについて議論になっているところもあります。
RepRap – RepRapWiki
3Dプリンタではなく、マシニングセンタと呼ばれる切削機械にセットすれば、こんな複雑な形状のエンジンだって削りだせます。
Kirkham Motorsports University CNC Billet Aluminum 427 FE Engine Block 1 of 3 – YouTube
もちろん現在の段階では、データを機械にセットすればやりたい放題という風にはなりません。機械のオペレーションや、部品の製造・組み立てには熟練した技術者が不可欠であり、加工が簡単で耐久力のある素材というのもなかなかなく、時間とコストのバランスを考えるとほとんどの工業製品に自作する意味はありません。
しかし、従来の電子メディアに加えて、これまでP2Pネットワークでは流通していなかった「工業製品のコピー」がダウンロードできるようになると、知的財産の概念に再び大きな影響を与えることは間違いありません。「違法にダウンロードした自動車で出かける」という日が来るのは、時間の問題と思われます。
ソース:The Pirate Bay – The galaxy’s most resilient bittorrent site
M4Carbine.net Forums – View Single Post – 3D-printed AR-15 lower
AR-15 Lower Receiver by KingLudd – Thingiverse
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