「変な研究」の頂上を選ぶ「イグ・ノーベル賞」2011年の受賞一覧
本家ノーベル賞が人類の発展に大きな貢献をした人に贈られるのに対し、こちらのイグ・ノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られるもの。毎年想像を(しばしば斜め上に)超えた発見が受賞しますが、今年もなかなか粒よりです。
生理学賞:
「アカアシガメのアクビはうつらないことに関する発見に対して」
(No evidence of contagious yawning in the red-footed tortoise Geochelone carbonaria)
いきなり「?」となる発見ですが、この研究によって「『あくびがうつる』というのは生物の本能に組み込まれているのではなく、かなり複雑な社会的関係がベースとなっている」ということが分かったのだそうです。
化学賞:
「緊急時、寝ている人を起こすのに最適なわさびガスの濃度を発見し、その知識をわさびアラームに応用したことに対して」
(ODOR GENERATION ALARM AND METHOD FOR INFORMING UNUSUAL SITUATION)
日本人も受賞しております。つーんとした刺激で危険を知らせるデバイスの特許を出願したそう。聴覚・視覚障害の人向けのアラームとして応用が期待される、結構マジメな研究です。ちなみに日本はこれで5年連続イグ・ノーベル賞入りです。
医学賞:
「禁断の流出:尿意の高揚による無関係領域のインパルス制御促進の研究に対して」
(Inhibitory Spillover: Increased Urination Urgency Facilitates Impulse Control in Unrelated Domains)
論文のタイトルは意味不明ですが、要するに「おしっこを極限まで我慢しているときは、なぜか頭の回転がすごく速くなる」ということを科学的に証明したということです。確かに追い詰められないと、あの早さでトイレまでの最短距離を計算することはできません。
心理学賞:
「『たかが』ため息? 感情のシグナル、そして困難なタスクに対する反応としてのため息の研究に対して」
(Is a Sigh ‘Just a Sigh’? Sighs as Emotional Signals and Responses to a Difficult Task)
古いアイディアを捨て新しい考え方を呼び込むまでに少し間を空けるためにため息をつくのではないか、ということを心理学的に初めて明らかにした研究。単に暗く悲しい気分を表現するためのものではない、ということが分かったのだそうです。
文学賞:
「グズが物事をやり遂げる方法に対して」
(How to Procrastinate and Still Get Things Done)
やらなければならないことをグズグズと先延ばしにしている人、通称グズは、他にもっと大事なことがあると、そっちを避けるためにやらなければならないことをきちんとやるようになる、という発見に対して賞が送られました。文学賞なのは元の論文がクロニクル誌のエッセイだからだと思われます。
生物学賞:
「瓶の上の虫: オスの玉虫がビール瓶をメスと間違えて交尾することの発見に対して」
(BEETLES ON THE BOTTLE: MALE BUPRESTIDS MISTAKE STUBBIES FOR FEMALES (COLEOPTERA))
どのメスと交尾するのか、ということについてどうやら色や光の反射が重視されているのではないか、ということが判明したという研究。ビンの反射が玉虫の色に似ているのだと思われます。
物理学賞:
「円盤投げの選手が感じるめまいと回転中に生じる「乗り物酔い」との関連に対して」
(Dizziness in Discus Throwers is Related to Motion Sickness Generated While Spinning)
ハンマー投げも円盤投げも回転しながら投げるのに、なぜかめまいを起こすのは円盤投げの選手ばかり……という謎を解き明かした研究。フォームの違いなどにより平衡感覚を失ったり、頭が変な動きをすることで乗り物酔いに近い症状が出るのだそうです。単に目を回してるだけではなかったんですね。
数学賞:
「『世界の終わりを予言してハズした人たち』に対し、『数字を使って予測したり計算したりするときは、きちんと検算をしましょう』と世界に啓蒙した功績に対して」
2011年5月、「地上のクリスチャンが神によって空中に引き上げられる」という「推挙(ラプチャー)」を予言したハロルド・キャンピングなど、多くの終末論者に対して数学賞が送られました。いますよね。根拠のない数字で恐怖をあおる人たち。おかげで誰が嘘つきなのか、最近は分かりやすくなりました。
平和賞:
「高級乗用車による違法駐車問題は、装甲車で踏み潰すことで解決することを発見したことに対して」
以前、DNAでお伝えした違法駐車にブチ切れて自ら装甲車で実力行使に及んだリトアニア、ヴィルニュスの市長さんがめでたく平和賞を受賞しました。このあたり、受賞者に対する強烈なディスをビンビン感じます。
公共の安全賞:
「目隠し運転は危険であることを実験・証明した功績に対して」
以下、実際に行われた実験の動画……こんなことやったら危険なん当たり前だろ!
Pioneer Days on Rt 128 – YouTube
目立たないが面白い研究にスポットをあてたり、かなりロックな批判をやらかしたりと毎年かなり盛りだくさんなイグ・ノーベル賞、来年はどんな研究が受賞するのか今からとても楽しみです。
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