往年の名女優、ジュリー・アンドリュースの声を救った「人工声帯」
映画「サウンド・オブ・ミュージック」で「マリア先生」を演じたジュリー・アンドリュースは1998年に声帯の手術の失敗により歌声を失います。もうこれで歌手としてのキャリアは絶望的、そう誰もが思った中、彼女を救ったのがマサチューセッツ工科大学で開発された「人工声帯」だったのです。
1998年、声帯にできた腫瘍を除去する手術に失敗したジュリー・アンドリュース。問題は声帯の傷をいかに修復するかにかかっていました。
アンドリュースが助けを求めたハーバード大学の喉頭手術の権威であるスティーブン・ツァイテル教授と、マサチューセッツ工科大学で生体用ポリマーを研究しているロバート・ランガー教授はこの難題に挑戦。傷を修復するのではなく、他の手段によって機能を回復させるという逆転の発想で、ポリエチレングリコールをベースにした人工声帯ゲルの開発に成功しました。
人工声帯ゲルの動画はこちら。本物の声帯とほぼ同じ粘度・弾力性をもっており、ほぼ同じように動いているのが分かると思います。
Mimicking vocal cord vibrations – YouTube
2009年、ジュリー・アンドリュースはこのゲルを注入する再手術を受け見事に復活。ゲルは半年ほどで劣化してしまうため、継続的な注射が必要だということですが、2010年には復活コンサートも開催されました。
Julie Andrews – Live in concert at the O2 – May 2010 – My Funny Valentine, Do-Re-Mi – YouTube
咽頭がんによって声を失った人も、こうした手術法によって再び喋ることができるようになるのでは、と期待されています。
またこうした生体材料の進化というのはロボットにも大きな影響をあたえるはず。こちらは香川大学の澤田秀之教授の研究室で開発された「発話ロボット」。人間の口とほぼ同じ構造をしており、空気を送り込むことで発声します。よりリアルな声で歌うロボットが生まれるというのはなかなか楽しみですね。
Robot mouth sings “Kagome Kagome” – YouTube
ソース:New material could offer hope to those with no voice – MIT News Office
Dame Julie Andrews to have revolutionary operation on vocal cords – Telegraph
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