科学と技術

戦地でもあらゆる料理が食べられる「食品用3Dプリンタ」をアメリカ軍が開発中


兵隊にはなるべくいいものを食べさせるほうがよく働くのは、過去の戦訓からも明らかなのですが、調理施設の維持や材料の輸送、下請け企業の管理など色々な問題があります。これらの問題を一気に解決すべく、色々な料理を出力できる「食品用3Dプリンタ」をアメリカ軍が開発しているそうです。

これはアメリカ軍の広報誌「ARMY Technology」7月・8月号の「3Dプリンター特集」で触れられたもの。新兵器や、衣服・装備品などありとあらゆる試作を3Dプリンタで行い開発速度を上げる取り組みなど、いろいろと興味深いプロジェクトが紹介されているのですが、その中の一つに「食品用3Dプリンタ」が取り上げられていました。

「食べ物」は人間にとって不可欠なものですが、流通を管理する側から見ると重たく、保存条件が厳しく、ものすごく種類が多いという欠点があります。軍用の携帯食料は3年間常温保存できるように作ってあるものの、普段の食堂の料理はそういうわけにはいきません。調理するにも時間がかかってしまいますし、量を正確に予測できなければ、腐って廃棄処分となり、運搬コストがムダになります。

そこで役に立つのが「食品用3Dプリンタ」。水や油に溶かしたタンパク質や炭水化物などの「インク」に超音波をあててコロイドの凝固を促進する「凝集」という働きを利用して、様々な料理を「印刷」するものです。

これは軍用としてはものすごくメリットが多く、まず同じ材料から違う食べ物を作ることができるので、品目の管理がぐっとラクになります。ある種の「インク」がなくなればそれを補充すればいいですし「オンデマンド」で出力すれば廃棄する分も少なくなります。そしてなにより「インク」の成分の許す限りあらゆる食物を再現できます。種類だけでなく、兵士たち1人1人の業種や疲労度によって、最適な量・内容の食物を出力するということもできます。

なんともSF小説のようなアイディアではありますが、チョコレートやキャンディなどは様々な材料を絞り出して作ることからある意味「3Dプリンティング」ですし、植物性のタンパク質と脂肪の層を重ねて本物そっくりの食肉を出力しようという研究もあります。

先日、アメリカ軍が積年の課題であった「ピザ」の携帯用食料化に成功したというニュースをお伝えしましたが、彼らの食にかける情熱はなみなみならぬものがあります。「フリーズドライ」「レトルトパック」も元は軍事技術からスピンアウトされたものですが、食品用3Dプリンタはいったいどのような食文化をもたらすのでしょうか。

ソース:ARMY Technology July/August 2014

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