狂気の沙汰、「ティーガーI戦車」の実寸大・走行可能なレプリカの制作風景
数々の伝説で知られるナチスドイツの「ティーガーI」戦車は、現在もプラモデルやラジコンで大人気のモデルなのですが、いくら人気でも1/1で作ってしまうというのはちょっと勢いがありすぎるのではないでしょうか。既存の車体の改造ではなく、本当に1からティーガー戦車を作ってしまった人たちがロシアに現れました。
これはロシアの模型・試作スタジオ「Rondo-C」が制作したもの。普段は超精密な船舶や航空機の模型や、工業製品の試作を行っている工房です。ソ連軍戦線の後方に現れては消える神出鬼没のタイガー戦車とそれを追うソ連軍戦車兵を描いた映画「Белый тигр(白き虎)」のために作られたそうで、実物大・5人乗り・時速35kmで走行、空砲射撃が可能という仕様となっております。
こんな映画。戦車も人間もたくさん出てきます。
Трейлер фильма “Белый Тигр” – YouTube
なんだかすごく建築屋さんな雰囲気のところで作られています。
塗装が済んだところ。
足回り。これはさすがに何か他のパーツを拾ってきたのではないかと思われます。以降、写真は順不同。
手作り感満点の溶接痕。
上に載せる砲塔は骨に鉄の板を接いで作る。
車体は鉄板をつないで作る。
これにさっきの足回りをつないだわけですね。
エンジンはトラクターのものらしい。
戦車のプラモデルを作ったことがある人は分かるかと思いますが、戦車の車輪まわりはものすごくパーツの数が多いのです。なにせムカデの足状態。
ロシアなんか古戦場に行くとティーガー戦車が池に落ちてたり土に埋まってたりするので、細かいパーツはそういうところからはがして使うのかな……と思ってたらほぼ完全スクラッチした模様。これはキャタピラ。流用じゃないんです。
なんと型を起こして……
全部自分たちで鋳造したそうです。これは身近な例でいえば「おにぎりを作るのにまず田んぼを買った」くらいの気合の入れかた。さすがロシア。
これを車体にもりもり取り付けてるとこうなる。
ムカデの足は一つ一つバネにつながっていて衝撃を吸収する仕組み。
車輪もたくさんです。
伝説の88mm砲。空砲が撃てるようにはしてあるそう。
ディティール。こういうのも一つ一つ作ったんですかね……
これは違う戦車ですが、こういうのを探して拾ってくるのとどっちがラクだったのでしょうか。
Another Russian Tank Pulled From The Mud – YouTube
完成。
理屈は分かりますが実際にやれるかどうかというとちょっと無理。
さすがに公道走行は無理なのでしょうが、トレーラーで運ばれていきます。
こちらがレプリカ。
そしてこちらが本物。もう少し写真が粗ければ見破るのは難しいかもしれません。
出オチというか開始直後から爆笑ものの迫力ある動画はこちらから。すんごくいい音させてます。
Replica Tiger I tank | Копия танка Тигр I – YouTube
映画などでは既存の戦車の車体にそれっぽい砲塔を乗せたそっくりさんがよく使われます。たとえば有名なところでは映画「プライベート・ライアン」に出てきたティーガー戦車もレプリカです。車輪がティーガーは互い違いについているのに対し、これはT-34がベースなのでまっすぐ並んでいます。
Saving private ryan tiger tank – YouTube
ティーガー戦車はあらゆる戦地で活躍し、味方からは頼もしく、敵からは恐れられる存在でした。日本を代表するアニメ作家にしてミリタリー好きとしても知られる宮崎駿氏も自身が連載する絵小説「宮崎駿の雑想ノート」シリーズでドイツ軍の戦車をネタにしています。中でも「泥まみれの虎」は戦車兵、オットー・カリウスと彼の駆るティーガー戦車がロシアの大地で奮闘する様子を独特のシニカルさでとらえた作品となっています。
1:06 2012/02/19追記:
映画のあらすじを訂正しました。
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