科学と技術

書類の山に次々とサインをしていく事務補助マシーン「Autopen」


大会社の重役ともなると印鑑を押すだけで日が暮れてしまうほどの量の書類と格闘しなければならないそうです。しかしハンコは他人でも押せますが、サインはそうはいきません。大量の書類にサインをするため「Autopen」と称される自動サインマシーンが海外ではかなり広く使われているようです。


「Autopen」は商品名ではなくこうした機械の総称で、1803年、イギリスのジョン・アイザック・ホーキンズの手によってアメリカで特許が取られました。

Automated Signature Technology社のMaxWriter。肉筆のサインを複製するだけではなく、手書きフォントを利用した「プリンター」としても利用することが可能でネット越しの出力も可能という多機能モデル。
YouTube – MaxWriter front close up

歴代のアメリカ大統領はこの機械をかなり愛用していたそう。なかでもケネディ大統領は相当なヘビーユーザーだったようで「The Robot That Helped To Make A President」というサイン解説本まで出版されています。

もちろん問題もあり、1988年にクエイル元大統領が共和党に多額の献金をしていた支援者に対し便宜を図るよう司法省にメモを送っていたという疑惑について「誰かがAutopenで勝手に署名した」と釈明するなど責任逃れに使われることもあります。

また、つい先日、テロとの戦いのため政府機関に個人情報の取得や資金移動の制限を認める、いわゆる「米国愛国者法」の延長が可決されましたが、この重要な法案にサインをするため当時フランスに滞在していたオバマ大統領がホワイトハウスのAutopenをスタッフに使わせてサインさせたことが「セキュリティ上の懸念がある」批判を浴びています。

印鑑や普通のサインのような物理的認証ですら真贋を巡るトラブルが絶えないのに、「印鑑の形状」「サインの動き」などを電子的に再現するとなると勝手に使われたり、送信している途中で盗まれて複製されるなど一気にリスクが高まります。

データの送受信では傍受されても意味が分からないよう暗号化するのが当たり前になってきましたが、オンラインで何でもできる時代、こうした認証手段そのものも進化していく必要があるようですね。

こちらはカナダの作家、マーガレット・アトウッドが考案した「Longpen」。ディスプレイとプロッタがセットになっており、作家が手元のタブレットPCに署名すると、プロッタがペンでサインをする仕組み。

元々は書店などで開催されるサイン会などに持ち込んで、リモートで読者と会話しながらサインができるように作られたものですが、カナダ・オンタリオ州政府では遠隔地に住む住民の行政手続きのためこのシステムが導入されているそうです。
YouTube – Exhibitor at London Book Fair signs for Plasma Screen from Canada using Longpen Technology

ソース:About that autopen – Boing Boing

Great Moments in Autopen History – Gawker

Robotic arm extend authors’ signatures over cyberspace | Canadian Manufacturing

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