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BitTorrentの巨大ネットワークを支える、わずか100人程度の「職業シーダー」達


映画や音楽、ゲームなどあらゆるデジタルコンテンツが複製され共有される世界最大のP2Pネットワーク「Bittorrent」。この海賊版ネットワークを支えているのは、実はわずか100人程度の「職業シーダー」であることが明らかになりました。彼らはなぜ海賊版を流通させるのでしょうか、またどこから利益を得ているのでしょうか。昨今のファイル共有事情などを含め、まとめてみました。

Bittorrentの基本的な仕組み

Bittorrentは元々、大容量のファイルを貧弱なネットワークでも配布できるようにと考案されたものです。

それまでのピア・ツー・ピアネットワークではファイル本体を持つユーザーに、他の多数のユーザーがぶら下がるという形を持っていました。この形では、ファイル本体を持つユーザーにアクセスが集中してしまうため、ネットワークに大きな負担がかかります。

そこで、Bittorrentでは完全なファイルの本体を持つ「シーダー」から、「リーチャー」が断片をダウンロードし、さらに「リーチャー」同士で、その断片を共有しあうというシステムが組み込まれます。このシーダーとリーチャーの群れをスウォームといい、スウォームが巨大になればなるほどそのファイルは効率よく共有されていきます。

ファイルの断片をシーダーからダウンロードすると、今度はリーチャーどうしがそれを共有しあう。断片が集まったユーザーは「シーダー」になり、新たなリーチャーの接続を待つ。

「シーダー」を追う

さて、Bittorrentネットワークに新しいファイルを投入するのは「シーダー」です。今回の調査では海賊版摘発のキーとなるシーダーについて面白いことが分かりました。実は、Bittorrent上に出回っているファイルのうち66%は、わずか100人程度のシーダーによって保持されているのです。さらにこの人たちはBittorrentの全ダウンロードのうち、実に75%を占めていることが分かりました。

調査はリーチャーがスウォームに接続するのに必要となる「トレントファイル」と呼ばれる鍵ファイルを利用して行われました。

Bittorrentの検索サイト「The Pirate Bay」の更新をRSSで見張り、新しいトレントファイルがアップロードされたら、すぐにそれを使ってスウォームに接続します。

このすることによってシーダー以外のユーザーが少ないスォームに接続できます。これを何回も繰り返し、反復して現れるIPアドレスからシーダーの数を絞り込んでいきます。

こうした調査で現れたのが、ごく少数の活発なシーダーの姿です。彼らはネット中から多数の海賊版ファイルをダウンロードし、それらを共有し続けているわけですが、いったい何が目的なのでしょうか。

なぜ「シーダー」になるのか

一見、シーダーは何の利益もなく、単に訴訟リスクを抱えているだけのように見えます。しかしシーダーになることで得られる金銭的な利益があるのです。

さきほど、トレントファイルを検索できる「The Pirate Bay」について触れました。こうした検索サイトには多数のユーザーがアクセスするため、多額の広告収入が望めます。仮に広告表示回数に対するクリック率を約0.2%、1回10円程度とすると、月間7億9千万アクセス(Google Ad Planner調べ)のPirate Bayの収入は月に1580万円となります。

また、検索サイトは広告以外にも収入源となります。多くのBittorrent検索サイトでは「より高速なダウンロード」として、オンラインストレージサイトからのダウンロードやメンバー登録を勧めており、ここから得られる「紹介料」もおそらく大きな収入源となっている可能性があります。2011年2月に摘発された事例では、18歳の少年が海賊版コミックへのリンクを提供するサイト「Manga.jp」を運営していましたが、こうしたストレージサイトからインセンティブを得ていた可能性が指摘されています

トレント検索サイト「btjunkie」の検索結果。様々な広告や誘導リンクが貼られている。

いわゆる「職業シーダー」は、自分の所属する検索サイトへのアクセスを増加させるために、検索サイトへのURLを含んだトレントファイルをたくさん流通させているのではないか、ということが今回の研究では指摘されています。

「職業シーダー」もう1つの罪

ところで、Bittorrentによる被害は海賊版流通による著作権保持者の利益侵害だけではありません。全世界のインターネットによる通信のうち実に3割から5割がBittorrentの使用によるものと言われており、通信会社やプロバイダに大きな負荷を与えています。こうしたP2Pソフトのユーザーに対する規制は年々厳しくなっていますが、同時に加入者減にもつながるため思い切った手が打てていないという現状があります。

Bittorrentの開発元は膨大なトラフィックデータを元にした「全世界・全都市プロバイダ規制レビュー」の公開準備を行うなどけん制ともとれる動きを見せています。オンライン動画配信サイト「Netflix」は、先日アメリカ・カナダ国内プロバイダについて同様のデータをブログで公開しましたが、猛烈な勢いでコメントがついており関心の高さを伺わせています。

「作り手、送り手、受け手」の3者モデルはもう時代遅れ

私達はこれまでこうした問題について、受け手が作り手・送り手の資金コストを支えることで利益を得るという「作り手、送り手、受け手」の3者モデルで考えてきました。

しかしこの記事で述べた「受け手が送り手からインセンティブを得る」例などの動きが既に始まっており、このモデルは時代遅れになりつつあります。

「受け手から利用料を徴収する」ことばかりがクローズアップされる海賊版問題ですが、作り手や送り手の新しい動きはなかなか見えてきません。Amazonは3G回線の使用料をコンテンツに分散することで、電子書籍端末「Kindle」のダウンロードを一切無料にしましたが、巨大なテレビ業界がどのような手を打ってくるか、今後に注目したいと思います。

ソース:BitTorrent Seeders: Driven By Profit? | bit-tech.net

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