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「1枚の写真をヒントに1人の男性の居場所を突き止めるゲーム」14年の歳月をかけてクリア


ネットに1枚の写真を投稿しただけで、ありとあらゆる個人情報を読み取ることができるのが現代社会……ほぼノーヒントの「この写真の中の男性の居場所を突き止めてください」という凄まじいゲームが14年の歳月を経て攻略されました。

2006年、イギリスのマインド・キャンディ社は代替現実ゲーム「Perplex City」を発表しました。

「Perplex City」は世界のどこかに隠された謎の構造物「The Cube」を見つけ出すというストーリーのゲーム。The Cubeのありかのヒントは当時販売されていたパズルカードに隠されており、これを買って遊びます。プレイヤーたちは現実の世界の中でヒントを探しながら、時に協力してパズルを解き、The Cubeの隠し場所に近づいていきます。

2006年にスタートし2007年にゲームは無事終了したものの、256種類のパズルカードの中に3つ未解決のものがありました。ひとつは総当り式での解読に理論上3万台のコンピューターで数ヶ月を要するRC5.64暗号を用いた「#251『第13の労苦』」、2つ目が数学史上未解決の「リーマン予想」を証明させる「#238『リーマン』」、そして3つ目が問題の「私を見つけなさい」と日本語で書かれた男性の写真「#256『10億分の1』」でした。

(ちなみに「#251『第13の労苦』」については解読に成功した人がいるものの、解読文や解読方法を開示していません。)

問題の「#256『10億分の1』」のカード。ヒントは「私の名前はサトシです」の一文だけ。

あまりにも困難な問題であるため、有志が解読用サイト「findsatoshi.com」を立ち上げ、この写真がフランスのアルザス地方、ケゼルスベールで撮影されたものであるところまでは判明しましたが、それ以上のことは不明。Mind Candy社は追加のヒントとして「サトシは自発的な協力者である」「彼には直接連絡を取らなければならない。サイトで情報を募集しても彼は関知しない」「彼に連絡を取れば彼はパスワードを教えてくれる」の3点を公開しましたが、それでどうなるというわけでもありません。その後、ガーディアン紙、ニューヨークタイムズ紙といった数々の大メディアが「サトシ」に関する情報提供を呼びかけましたが有力なものはありませんでした。

しかし2020年2月、事態は大きく動きました。ネット掲示板Redditのユーザー、th0mayが、AIによる顔認識検索エンジンPimEyeを使って、とある日本の企業のブログに掲載された夏祭りの写真に「サトシ」らしき人物が写り込んでいるのを発見したのです。

同じブログには「サトシ」らしき男性の写真が他にも掲載されていました。また社員がスポーツ大会に参加した記事があり、その大会のリザルトには「サトシ」の名のつく選手が1名だけ参加していました。つまり、その企業のその名前の人が、目指す「サトシ」では……そこでコンタクトをとった所、見事「サトシ」であることが判明したそうです。

サトシ発見を告げる「FindSatoshi.com」創設者のツイート。

ちなみに「サトシ」が投げかけるはずだったヒントは「炎を生んで死んだのは誰?」という日本の神話に基づいたものだったそうです

「サトシ」は、当時MindCandyと関係のあったゲーム関連のPR会社の社員の友人、であるとのこと。パズルは「すべての人は6ステップ以内でつながっている」といういわゆる「六次の隔たり」を用いて解かれることを意図していたそうですが、実際には最新のAI技術と地道な資料解析で突破されることとなりました。

「フランスを訪れたことのあるアジア系の男性」という茫漠にもほどがあるヒントだけでも人を見つけ出すことができるようになったという、この14年の間の人類の進歩の凄まじさ。

公開された情報を解析して機密を暴く「OSINT」は今や誰もが行えるものとなり、もう誰も姿をくらますことができない……と思うとちょっと恐ろしさすら感じてしまいますね。
Google EarthとSNSを使ってISISの訓練キャンプの場所を特定する – DNA

ソース:Find Satoshi | A Six Degrees of Separation puzzle. Is it possible to locate a man given only his photograph and first name?

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