圧倒的迫力でCIAの諜報活動の1シーンを表現した美術品コレクションがすごい
アメリカ国外での諜報を担当する中央情報局、いわゆるCIAは広報のために自らの活動の1シーンを描いた絵画や彫刻などを収集しています。そのコレクションの一部は公開されているのですが、いずれも非常にヒロイックで歴史の重みを感じさせるものになっています。
「Les Marguerites Fleuriront ce Soir(デイジーは夜に咲く)」
フランスに潜入し現地の連絡員やレジスタンスを組織してドイツと戦った女性、バージニア・ホールの絵画。元はアメリカの機関で働いていましたが狩猟中の事故で片足を失い、海外勤務から外されることになったのをきっかけに、イギリスのSOE(特殊作戦執行部)に参加した人物です。
農家の女性として村にもぐりこみ、チーズの配達に行った先で兵士の数を数えたり、来る連合軍の降下に備えて地形を記録したりなど活躍しました。一度内通によってフランスから脱出するも、再度ドイツに戻り諜報活動を続けた女傑です。
これは納屋に隠したモールス無線機で本国と暗号通信を行っているところ。タイトルの「Les Marguerites Fleuriront ce Soir(デイジーは夜に咲く)」は、補給物資の内容を伝える暗号文。奥の男性は自転車を改良した発電機で無線に電気を送っています。
「アースクエイク最後の飛行」
アースクエイク・マクグーン(Earthquake McGoon)ことジェームズ・マクガバーン(James McGovern)は、CIAが隠れ蓑として使っていた民間航空会社Civil Air Transport(CAT)のパイロット。
ベトナム半島に共産勢力を閉じ込めるべく、アメリカは第一次インドシナ戦争においてフランス軍を支援しました。しかし国として公式に支援することはできないため、CATのようなダミー会社がよく使われたようです。CATのパイロットたちは米軍マークの上からフランス軍のマークを塗ったC-119を使い、最大の激戦といわれるディエンビエンフーの戦いの真っ最中、1954年3月13日から5月6日の間に682回の物資投下を行いました。
絵画がとらえているのは「アースクエイク」の登場するC-119が対空砲火を受けたその瞬間。マクガバーンはこの後C-119をラオス国境を超えるところまで飛ばし、墜落しました。その後、墜落地点は2002年に判明、2006年にマクガバーンの遺体であることが確認され、2007年にアーリントン墓地に埋葬されました。
「北極圏での7日間」
冷戦中、アメリカとソ連はあらゆる面で競争を行いました。それは北極圏の探索も例外ではありません。コールドフィート(COLDFEET)計画は廃棄されたソ連の物資集積所に残された物品を回収し、情報を探るために実行されました。
もちろん滑走路はないので普通の輸送機では降りられません。天候と距離の問題からヘリコプターを差し向けることもできません。そこでまず調査員はパラシュートで降下。そして物品を回収した後は、空に浮かべた気球とワイヤーで体をつなぎ、固定翼機のフックで引っ掛けて回収してもらう「フルトン回収システム」が使用されました。
「アンタッチャブル」
A-12はまさに誰も触れることのできない超高空・高速偵察機として1957年に開発が始まりました。ミサイルの届かない高空から写真を撮影し、鮮度の高い敵の位置情報をアメリカにもたらすことになりました。
「最初の空中戦」
1968年1月12日、北ベトナム軍所属になるAN-2コルト4機が、アメリカ軍のレーダーサイト「サイト85」を爆撃するために飛び立ちました。この基地に物資を搬入していたCIAの偽装企業、エア・アメリカ社のUH-1ヘリが偶然これを発見、乗り組んでいたテッド・ムーアがAK-47ライフルで射撃し、2機を撃墜するという快挙をあげています。ヘリが固定翼機を撃墜した数少ない事例です。
「壁の崩れた日」
元はベルリンの壁の崩壊と、それにあわせて西側に向かって旅立つ人々の勢いを表現するものとして着想されたブロンズ象。あわせて2体作られ1つはブッシュ元大統領がテキサスに建立した図書館に、もう1つはCIAの本部ビルディングで展示されています。
「少数の、勇敢なる国民」
2001年9月11日の同時多発テロ事件が発生するやいなや、大統領はCIAに対し「テロとの戦い」を指示します。わずか15日後にはCIAの準軍事組織(パラミリタリー)達が反アルカイダの部族とコンタクトをとり、来る大体的な軍事侵攻の準備を整えていました。
絵画はCIAが所有する旧ソ連製ヘリMi-7から食料、武器、軍資金などの補給している場面。敵勢力圏奥深くでの活動は非常に危険であり、視界がきかない夜間にこそこそと行動をとるしかありませんでした。
CIAの「暗躍」っぷりはよく知られたところであり、ともすればこれらの絵画は誇張の効いたプロパガンダにも見えてきます。しかし、この絵画に描かれた人々、そして描かれなかったさらに多数の人々のことを考えると、改めて平和のために犠牲になったものについて思いをはせずにはいられません。
ソース:CIA’s Intelligence Art Collection — Central Intelligence Agency
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