ほんとのところ、アメリカ人は銃規制についてどう考えているのか
たびたび乱射事件が起こるアメリカ。先日は小学校で児童を含む20人以上が死傷するという痛ましい事件があったばかりです。これらの事件が起こってもアメリカ人は銃を持ち続けたいと思っているのか。ほんとのところ銃についてどう考えているのか統計を読んでみました。
そもそも:アメリカ人は銃の所持についてどう思っているのか
アメリカといえば鉄砲の国、誰しもが武装と自衛の権利をもち、すぐ近所の雑貨屋スーパーマーケットでライフル弾が買えるくらいに銃が身近なものである……というイメージをお持ちの人も多いと思います。
しかし、国民の大多数が銃の所持を当たり前と思っているか、というと実際のところそうではありません。
これは1993年から2012年にかけて規制派と反規制派の割合の変化を表したグラフ。薄い色の「Control Gun Ownership」が規制派を表します。反規制派は決して主流ではないどころか、歴史的にはむしろ少数派であったことが分かります。
大きめの変動が出ている理由はまちまち。歴史的な乱射事件があった時などには「規制派」が増加するようにも思いますが、バージニア工科大学の事件があった2007年には「規制派」は減少していたり、その逆の事例も見られるのでこうした銃犯罪がトリガーというわけではなさそうです。むしろ景気のよしあしとリンクしているように見えます。
銃所持に賛成・反対しているのはどんな人たちなのか
さて、それでは規制派・反規制派にはそれぞれどのような人が多いのでしょうか。以下の表を見てみましょう。一番左の列が属性、所持賛成率、所持反対率、「どちらでもない」率となっています。
おおむねの傾向で、銃を持ちたがるのは30~49歳、白人男性(White men)、共和党員(Republican)、地方在住者(Rural)といったところ。
反対に銃規制に前向きなのは黒人、大学院以上の卒業者、民主党員(Democrat)、都会居住者(Urban)、北東部居住者といった人たち。
大きな傾向としては保守派の人ほど銃規制には反対、革新派は規制賛成派というのが見てとれますが、あくまでも傾向というだけで絶対的なものではありません。
「銃規制後の世界」が分からないアメリカ世論
結局のところアメリカ世論は「銃をどうすればいいのか」ということについて非常に漠然としかとらえていないように見えます。建国以来の歴史の中で武装することが当たり前となっている今、急にそれを無くすことに対する不安が分かるアンケートの結果がこちら。
「重火器(Assault Weapon)の所持によって世の中の安全は向上するか、しないか」という問いの答え。「より安全になる(Safer)」と「より危険になる(More dangerous)」、そして「DK(わからない)」の3つの回答が得られています。「Assault Weapon」は「攻撃用火器」という強い意味をもつ言葉なのでその影響もあってすべての層で「より危険になる」のほうが多くなっています。
ではこちらの表も見て見ましょう。「銃の所持によって犯罪から身を守られるか、それともより危険が増すか」という問いです。表現はともかく内容は先の問いと変わりないのですが、これだと結果は「銃の所持によって犯罪から身を守られる」のほうが多くなります。
もう1点「こういう施策は銃の乱射を防ぐのに効果的かどうか」というアンケートの結果がこちら。「Very effective(すごく効果がある)」から「Not Effeective(効果はない)」までの3段階評価です。「警官を学校に配置する」「メンタルヘルス関連の政府予算を増やす」「メディアにおける射殺表現などを減らす」など、従来からよく言われているような内容に人気があるのが分かります。
どこの国でも一般市民は社会問題に対してそこまで意識が高いわけではありません。国ごとにひょっとしたら多少の違いはあるかもしれませんが、おおむね政治的志向はポピュラーな事件や自分達の生活レベルに大きく左右されるものです。
少なくとも「アメリカは国民総武装国家である」というのはウソです。一部の声高な人を除けば「まぁあってもいいんじゃないかなぁ……憲法にもOKって書いてあるし」くらいが関の山なのです。決して特異な国ではなく、同じような人間が同じように暮らしている国なのです。
ソース:Gun Polls in the Wake of the Newtown Tragedy: Have Americans Changed their Minds on Gun Control?
www.people-press.org/files/legacy-pdf/12-20-12 Gun Policy Release.pdf
To Stop Shootings, Americans Focus on Police, Mental Health
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