科学と技術

あと5年でアメリカ軍から核実験に参加したことがある技術者がいなくなってしまう


技術というものは勉強するだけでは不十分で、それを利用して何かを作ってみるまでは真に身についたということはできません。しかし、アメリカではあと5年もすると、核実験で実際に核爆発を発生させたことのある研究者がいなくなってしまうそうです。


アメリカ国家核安全保障局は、文字通り核兵器の拡散を防ぎ安全を確保する機関。その業務の中には核兵器の研究者をリストアップし管理するというものがあります。

しかしそこのThomas D’Agostino次官によると実際に核実験を手掛けたり、そこで使われた兵器の設計に関わった研究者はアメリカにはもう13~15人しか残っておらず、その数は年々少なくなっているそうです。アメリカが最後に核実験を行ったのは1992年。その後の研究者達は教科書やシミュレーションで学んだことがあっても、作ったものを爆発させたことがないというのです。

冷戦以降、大国同士の全面戦争が起こるという見通しは低くなりました。政府はカネのかかる核兵器から「テロとの戦い」やサイバー戦争にその軸足を変えつつあります。オバマ政権・メドベージェフ政権は2011年に、大型核弾頭の配備数を1/4にまで削減する第四次戦略兵器削減条約を批准し、核兵器は廃れゆく兵器という流れはかなり強いものとなりました。

核兵器の優秀な研究者を探そうとしても、すすんでそうした「廃れゆくプロジェクト」に関わろうという人はいません。多くの犠牲をはらって得られた技術や知識の集積は今や失われつつあります。世界初の原子爆弾が生まれた国立ロス・アラモス研究所が2012年2月に自主退職者を募ったところ、その数は全研究者の1割近い約600人にも上っています。

また、先端のプロジェクトに関われないことで現場の研究者の士気は下がり、応用分野の研究・開発能力が落ちている、研究上の優位を維持できないという声もあるようです。

必要がないのであれば手を出さないにこしたことはありません。しかし、今まで作ってしまったものをどうするのか、核兵器に何か事故が遭った場合、それを作った専門家なしで対処できるのか。残すにせよなくすにせよまだまだ問題は山積みです。

ソース:Nuke Expert Pool Shrinking | Defense News | defensenews.com

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