最高のリアルさが生む極限の緊張感、映画「ネイビーシールズ」公開直前レビュー
アメリカ海軍特殊部隊SEALs全面協力のもと、装備から作戦立案に至るまで「ストーリー以外は本物」という触れ込みのアクション映画「ネイビーシールズ(原題:Act of Valor)」がギャガ配給でいよいよ22日から公開となります。いったい何がすごいのか?実際に見ることができたのでまとめてみたいと思います。
映画『ネイビーシールズ』公式サイト
まずはあらすじのおさらいから:
麻薬取引と武器密輸で莫大な富を手にする男、通称クリストと東南アジアのテロリスト、アブ・シャバールの関係を探るべく潜入していた女性CIAエージェントが拉致された……CIAの要請をうけ彼女を奪還すべくローク大尉率いるアメリカ海軍特殊部隊SEALsのチーム7が出動、アジトを急襲しエージェントを救出することに成功した。
この時アジトから発見された携帯電話に残されたデータから、歴史上最大級のテロ計画が発覚した。イスラム聖戦派のテロリスト16名が、ジェル型爆弾の球500個を付けた驚異の破壊力を持つ爆弾を身につけ自爆攻撃を行う。セラミック製のために金属探知器に引っ掛かることはない。アメリカの主要都市すべてをターゲットにした攻撃計画が進行中だというのだ。
情報を元にクリストとアブ・シャバールを追跡するチーム7。あらゆる手段を駆使した執念の偵察の結果、シャバールはメキシコにいることが判明。しかしそこは現地軍と巨大な麻薬カルテルが勢力争いを行う、史上最悪のホット・ゾーンだったのだ……
極限まで「ウソ」を排した映像作り
ミリタリーアクション映画ではストーリーの面白さだけでなく、しばしば考証の「確からしさ(正しさ)」が問題になります。物語がドラマチックでロマンにあふれ、かつ現実的かどうかという点が、ほかのジャンルの映画よりも評価されることが多いように思います。
「ネイビーシールズ」では写っているすべてが「本物」です。アメリカ海軍特殊部隊SEALs(シールズ)が、あらすじのような状況におかれたらどうなるか。この映画最大のアピールポイントはこの1点につきます。
体を揺らさずヘビのように忍び込み、重たい銃を左右に振っても行き過ぎることなくピタリと止める。部屋に突入するときのバディとの息の合い方と滑らかさ……射撃をすれば敵の弾も味方の弾も容赦なく当たり、ヘリや船もギリギリのところまで寄せてくる。まさにすべてが本物。何百回、何千回と訓練をこなしてきた人たちならではです。
反動に対する力の入り方がごく本物っぽい。
実際の作戦ではこれをリハーサル無しでやる、ということを思うと背筋が凍るような操縦テクニック。
セリフまわし一つとっても、軍事用語だらけのセリフやハンドサインもごくごく滑らか。公開されているスチル写真(止め絵)を見ても、着ている服が体に馴染んでいたり、荷物の重さに慣れた雰囲気が出ていて締まった画面作りに貢献しています。
とにかく「2丁拳銃で横っ飛びしながら弾をばら撒く」といったような「映画っぽい演出」はありません。最初から最後までギンギンにみなぎった緊張感は異常なものがあります。
公開当時、政府関係者から「暴露しすぎ」と声があがったそうですが、まさしくその通り。出演者プロフィールによれば、30代後半~40代の教官達が多く出演しているとのことですが、実際に「これ、本当は見せてはいけない部分じゃないだろうか……」と心配してしまうほどに精密なディティールとなっています。
思ったよりもずっと真に迫った演技と物語作り
それではディティール以外のドラマの部分はどうでしょうか。
この手の映画では常に「政府のプロパガンダだ」という批判がつきまといます。特に9.11の大規模テロ事件以降この傾向は特に顕著で、これに「本物」はどう答えを出すのかに興味がありました。そして「ネイビーシールズ」は期待を裏切らない映画です。
狂信的なテロリストのような派手なキャラクターは現れず、お金のことしか考えない武器商人、仲間と板挟みになってテロを実行せざるを得ない武闘派、あまり協力的ではない同盟国の軍人たち、そして母国を守るためとはいえ過酷で気まぐれな任務に振り回されるシールズの隊員。ヒーローと悪者の区別はとてもあいまいなものになります。
例えばシールズの隊員が尋問を行うシーン。暴力こそ振るわないものの、圧倒的な武力と情報量を背景にして、ためらいもなく相手の精神的な急所を追い詰めていくところは実に暗いものがあります。ここは間違いなく見どころの一つでしょう。
また、こういうセリフ劇が成立するのは演技力があってこそ。家族との団らんなど、戦闘シーン以外でも隊員たちの演技は真に迫るものがあります。恐らくはこれらも「本当にあったこと」なのでしょう。
まとめ
「ネイビーシールズ」は仕事と仲間と家族を大事にする普通の男達をこれでもかというくらい正確に描いた映画です。圧倒的なディティールに最初は面食らいます。しかしこの映画を見て感じたことは、きっと現実を見ても感じることになります。
究極にディティールがリアルな戦争映画は、本当にリアルな戦争を描いているでしょうか?「ネイビーシールズ」は間違いなく今、そこにある問題をとらえている映画です。
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