130年前のレコードの中の音を、光学スキャンで読み取り・再現することに成功
レコードが発明された初期のころに録音された盤は劣化が進んでいたり再生機器がなかったりと保存はなかなか難しいものだったのですが、アメリカの研究チームがその困難にあえてチャレンジ、見事に成功したようです。
レコードを保存するには1回はプレイヤーにかけて音声を再生しなければいけません。しかしレコードの多くは樹脂製。プレイヤーの針によって凹凸が削れてしまうために、うっかり再生するとレコードそのものを破壊してしまう恐れがあります。凹凸を別の樹脂でコピーする方法もありますが、これもレコードにダメージを与える可能性があります。
また、大昔のレコードはロウ製で脆かったり、レコードそのものではなく大量生産のための成形型しか残っておらず、再生ができないという場合もあります。なんでもかんでもデジタルデータになっている現代と違い、物理メディアの中に残されたデータを取り出すのはかなりの困難がつきまとうのです。
そこで、アメリカのローレンス・バークレー国立研究所と、膨大な量の収蔵品で知られるスミソニアン博物館とアメリカ議会図書館は合同で、研究を行い、光学スキャンされた凹凸から再生機器の物理的な動きを計算で再現、音声に直すという非破壊式の抽出に成功しました。
ディスクは注意深く光学スキャンし表面の凹凸を読みとります。
ものすごく厳重に梱包された原盤。
録音黎明期のレコードは実に多様。こちらはガラス盤の上の感光材に光を当てて音を記録する凹凸を作り出すというもの。
また、こちらはロウの原盤に銅メッキをかけて凹凸を写し取ろうとしたもの。見ての通り外周部分で失敗してしまったため、そのままお蔵入りしてしまったそうです。
こうして凹凸を光学スキャンしたら、今度はその凹凸を再生機器がどのように読み取るのかをコンピューター上で再現し、音声信号に直します。光学読み取りなのでキズなのか信号なのかはこのように人力で判別しているようです。
レーザーで溝を読み取るレコードプレーヤーはすでに市販されていますが、今回の成功によってレコードだけではなく、初期に用いられていたロウ製の筒など様々な材質・方式の録音媒体や、そもそも破損してしまって再生機器にかけることができないもの、あるいは再生機器が現存していないものなどから音声を抽出する技術が確立しました。
こうして抽出された音声はこちら。
「ワン、ツー」と数を数えている。
http://irene.lbl.gov/Smithsonian/Audio/Release/312119_Lateral_Electroplated_Disc-120.wav
「バ・ロ・メーター」という単語を読んでいる。
http://irene.lbl.gov/Smithsonian/Audio/Release/287686_Barometer.wav
最後のほうで「メリーさんの羊」の歌詞を読み上げている。
http://irene.lbl.gov/Smithsonian/Audio/Release/Example2-PD1-p93-44100.wav
シェイクスピアの「生きるべきか死ぬべきか」の問いを読んでいる。
http://irene.lbl.gov/Smithsonian/Audio/Release/Example1-Green-p93.wav
Googleの書籍保存プロジェクト「Google Books」では各地の図書館にブックスキャナと人員を送り込み、手作業ですべての本のページをスキャンするということを行っています。今回のプロジェクトはその音声版となることができるでしょうか。楽しみです。
ソース:Playback: 130-Year-Old Sounds Revealed | Newsdesk
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