その名は「ハーレー殺し」、70年代最速のドラッグレーサーバイク「Hogslayer」
1/4マイルドラッグレース(400mの直線を走るレース)で個人やショップ単位で参加するアマチュアが活躍していた1970年代、ニトロメタン燃料で300馬力を搾り出しライバルのハーレー・ダヴィッドソンを蹴散らし続けたのがこのカスタム・ノートン「Hogslayer(イノシシ(=ハーレーの愛称)殺し)」でした。
アメリカで初めて競技としてのドラッグレースが行われたのは1949年、カリフォルニア州サンタバーバーラのゴレタ空軍基地の滑走路でした。ドラッグレースは全米規模の団体によって組織されるようになり、技術水準も向上。60年代後半には9秒台だったタイムが、70年代半ばまでにJoe SmithのドラッグスターやRuss Collinsのホンダ・レーサーなどによって7秒台後半にまで縮まります。
ハーレーのショベルヘッドエンジンを2基搭載したドラッグスター
Joe Smith Drag Racing: Joe Smith Double Engine Dragster
Russ Collinsのドラッグレーサー。ホンダの750cc4気筒エンジンを3台積んだマシン。
RC Fuel Injection
1969年の雑誌記事によると、ニトロメタン燃料クラスのレースはハーレーダビッドソンが独占していたそうですが、そんな中ノートンのディーラーショップでもあったアメリカ・ウィスコンシン州のSunset Motorsを経営していたTC ChristensenとJohn Gregoryは打倒ハーレーを目標に、ノートン・コマンドの改造にとりかかりました。
まずノートン・コマンドの750ccニ気筒エンジンを880ccまで排気量アップ、95%ニトロ燃料を使う機械式直噴エンジンに改造したものを2台搭載、計300馬力まで出力を向上しました。一方で純正部品が多く使われており、予選でメカトラブル起こしリヤイヤするライバルを尻目に最後までレースを続けるだけの耐久力に優れていたそうです。
このパワーを生かすため、重機のブレーキプレートを使ったスリッパークラッチを製作、さらに当時のドラッグレーサーとしては画期的だった2速ミッションをランブラーのオーバードライブギアから作り上げました。
前後のタイヤの差に注目。後輪の幅は通常の倍のサイズ。
こうした改造を経て完成した「Hogslayer」は最高速度時速180マイル(約290km)でコンスタントに7秒半のタイムをマーク、1970年代末にスーパーチャージャー付きのインライン4気筒エンジンが台頭するまで、数々のタイトルを獲得し続けます。そして1977年、ノートンの営業停止とともに「Hogslayer」もレースの日々を終えました。
エンジンが3基になった「Hogslayer 3」も作られたようですが、こちらはレース中の事故によって失われてしまったそうです。
ライダーのTC Christensenは後年、アメリカモーターサイクル協会が運営するMotorcycle Hall Of Fameから「Hogslayerはドラッグレースをアマチュアのものからプロのスポーツにする架け橋となった」と功績を認められ殿堂入り。現在、Hogslyaerはイギリス国立モーターサイクル博物館に収蔵・展示されています。
現在、ドキュメンタリー映像も制作中。オールドレーサーが好きな人には面白いのではないでしょうか。
YouTube – "Hogslayer" Documentary Trailer
ソース:Video: the Norton Hogslayer | Hell for Leather
1975-1977 1760cc Norton Drag Racer ‘Hogslayer’
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