科学と技術

枕を銃のサイレンサーとして使うと本当に銃声を抑えて消すことができるのか?いろいろ調べてみた


映画やドラマでは殺し屋やスパイがターゲットの寝室に忍び込み、枕越しに銃を押し付けて静かに射殺するシーンが時々見られます。枕を押し付けるのは枕をサイレンサー(あるいはサプレッサー)として用いるため……といわれていますが、枕やクッションは銃のサイレンサーの代用品として本当に銃声を静かにさせることができるのでしょうか?

銃声はなぜうるさいのか

銃声を構成するのはこれらの要素です。

1. 音速を超えた銃弾が発する衝撃波
2. 火薬の燃焼ガスが放出される際の衝撃波
3. スライドやハンマーなどのメカノイズ

このうちサイレンサーが静音化するのは「2」の火薬の燃焼ガスが発する音です。吹き出す燃焼ガスを一度受け止め、サイレンサーの内部で速度を落としてから排出することで、音を静かにしています。

これは音の大きさだけでなく、音の高さ・低さ・響き方といった「音質」にも変化を与えます。サイレンサーを使うと高音成分が減って音の方向が分かりにくくなり、反響が少なくなる、というのはよく聞く話です。

それでは枕をサイレンサーとして使うとこれらの要素にどのような影響があるのでしょうか。

枕やクッション程度では銃弾のスピードはほとんど変わりませんし、銃のメカの動きに何か影響があるわけでもありません。

しかし火薬の燃焼ガスが枕の中身に当たり、ゆっくりと吸収され拡散しにくくなり、サイレンサーとして機能する……ということはありそうですね。羽毛やウレタンといった枕の中身の違いでも変化量は変わりそうです。

枕は銃のサイレンサーとして使えるか?

それではいくつかの動画を見てみましょう。まずは「リボルバーの神様」ことプロシューターのジェリー・ミチュレックによる実験動画から。
The Pillow Silencer – Gun Myths with Jerry Miculek in slow motion! – YouTube

実験には9mmの音速弾が使用されました。動画の音声を聞いてみるとなんとなく銃声に変化はあるようですし、ジェリーは動画の中で「枕は確かにサイレンサーのように銃声を抑えてくれる」とのべています。

しかし銃声が静かになったかどうかはジェリーの感覚だけで語られていて、マイクなどを用いて客観的に測定されたわけではありません。

世の中にはマイクで測定して実験した人がいます。それがこちら。実験の条件はほぼ同じ。オートマチック式の拳銃と音速弾を用いています。

Pillow Silencer Video (various pillows and a decibel Meter) – YouTube

枕の向こう側、手前側、横方向にマイクを置き、それぞれの音量を測定したところ、一番大きな変化があったのは枕の向こう側、つまり「撃たれている人が聞こえる銃声」でした。しかしそれ以外の方向ではほとんど変化が見られませんでした。枕は銃のサイレンサーとしてはほぼ効果がないようです。

ちなみにこの動画の人は「銃口を枕にぎゅっと押し付けないと音を抑える効果が少なくなるのでは」という質問に対し「やってみたが音量に変化はなかった」と返答しています。

こちらはライフルと枕で同じような実験をした人の動画。同じく音量計を用いて測定していますが、枕の有無でほとんど結果は変わっていません。
PIllow silencer..!! It works..?? – YouTube

枕を銃のサイレンサーとして使うと何が起きるのか

ここからわかることは何でしょうか。

銃のサイレンサーとして枕を用いると火薬の燃焼ガスが枕やクッションの中の綿や繊維、羽毛などを通り抜ける間に音質が変化し、聞こえ方が変化するのは確かなようです。

また聞き手の位置からは枕の表面で音が反射したり、銃口から生じる衝撃波が直接体に当たらなくなるので、音量・音質以外での変化を感じることもあるようです。

しかし実際の音量にほとんど変化はありません。暗殺のために銃を枕やクッションに押し付けるのは銃声を抑えるため、というよりはターゲットに声を出させないようにするため、返り血を浴びないようにするためといった意味のほうが大きいでしょう。枕にサイレンサーとしての機能を期待することはできないようです。

枕やクッション以外ではどうでしょうか。こちらは水風船を使った実験ですが、音質にかなり差が出ているように聞こえます。つまり水枕なら多少は効果はあるかもしれません。

しかしわざわざ水枕を探すくらいなら、7割が水で出来ている「人体」に押し付けても消音効果は期待できそうです。
Water Balloon Silencer – YouTube

銃については色々な神話や迷信、言い伝えがあります。測定技術が未熟だった大昔のレジェンドや、なんとなく声が大きい人の主観的な意見、外国語の解釈・翻訳のミスなどによって色々です。「サイレンサーというと完全に無音みたいで正確でないからサプレッサーと呼ぶようになった」などもそうした都市伝説の一つ。時代のメスが入ることを祈りたいものです。

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