世界のびっくりニュース

「銃声を抑えるあの部品」の名前は「サイレンサー」と「サプレッサー」のどちらが正解か


「銃口にとりつけて銃声を抑えるあの黒い筒のようなもの」の名前は「サイレンサー(Silencer)」なのか「サプレッサー(Suppressor)」なのか、どうしても白黒つけたい人がいっぱいいるようですが一体どちらが正解なのでしょうか。

まずは結論から:「サイレンサー」と「サプレッサー」はどちらが正解か

それでは結論から言いますと……

どちらも正解」です。

もうちょっと正確に言うならば「どっちにも間違いが含まれているが、どちらも同じくらい正しい」となるでしょうか。英語圏、特にアメリカであればどちらの名前で呼んでも「ああアレね」と分かってもらえます。詳しく見ていきましょう。

語学的に正しいのはどちらなのか。

よく見かけるのはこういう反論です

「1.) アレをつかっても完全に音が消えるわけじゃない
抑えるだけなんだから『サプレッサー』が正解だ

2.) 完全に消えてないから『サイレンサー』はおかしい!

異論は認めない!」

1.)については正解です。「アレ」を使えば相当小さな音にできますが、それでも完全に音を消すことはできません。実際に見てみましょう。

こちらは22口径というかなり小さな弾丸を「サイレンサー」あるいは「サプレッサー」で減音している動画です。釘打ち銃やパーティークラッカーよりも小さな音になりますが、それでも完全ではありません。
The best .22LR suppressor out! Silencerco Sparrow – YouTube

というわけで2.)「Silence」は「沈黙」「静寂」だから、音を抑えるだけなら「サイレンサー(Silencer)」はおかしい、とこうなるわけです。

これは文法の勘違いです。「Teach-er(教師)」や「Eras-er(消しゴム)」のように「er」を付けて名詞形にできるのは動詞。つまりこの場合の「Silence」は「音を抑える」という意味の動詞です。

そして動詞の「Silence」はこんな意味です。

オックスフォード英英辞典では:

Silence
verb: cause to become silent; prohibit or prevent from speaking:
沈黙させる、話すのをやめさせる

ウェブスターでは:

Silence
verb: to cause (someone or something) to stop speaking or making noise : to cause (someone or something) to become silent:
話したり音を立てるのをやめさせる。静かにさせる。

Medical: to block the genetic expression of : suppress
<医学>:働きを抑制する

となっています。要は「Silence」も「Suppress」も音に関して言えば両方とも「抑制する」という意味になるため「音を抑える『サイレンサー』」という表現におかしいところはありません。

むしろ厳密さでいえば「サプレッサー」という表現の方が実は問題が多いのです。

実は「サプレッサー」の方に問題アリ

さてそれではクイズです。銃口に取り付けて火薬の閃光を見えにくくする「この部品」はなんというでしょうか。

ファイル:Caroline-canon-degivrage-p1000523.jpg – Wikipedia

もちろん答えは「フラッシュサプレッサー」ですね。

実は銃用語で「サプレッサー」と言う場合、厳密には音を抑える「サウンドサプレッサー」と閃光を抑える「フラッシュサプレッサー」の2つを指します。

先述の「サプレッサー」論の人たちはなるほど「抑制する」という点に注意しているのかもしれません。しかし肝心の「音」という点にはまったく触れていません。このように「サプレッサー」と「サイレンサー」は厳密さでいえばどっこいのレベルです。

「フラッシュサプレッサーなんて言葉は聞いたこともない&使わない。
サプレッサーは音を抑えるもので
これは『フラッシュハイダー(Flash Hider)』だ。
用語は厳密に使うように。
というわけで『サイレンサー』は使わない」

という厳密ぶりたい人もいるでしょう。しかしそこまで厳密な人が「閃光を隠すもの」という意味の「Flash Hider」は使うのは変ではないでしょうか。だって閃光を「完全に」消すことはできませんから。

そういうわけで本当に言葉の意味を厳密にとらえるのであれば「サイレンサー」も「サプレッサー」も同じくらいの間違いを含んでいるといえるでしょう。

(もちろん「フラッシュハイダー」もまったく問題なく通じる用語です。同じ部分を「マズルブレーキ」「コンペンセイター」と呼ぶこともありますが、これらの使い分けはまた別の問題となります。)

法的に正しいのはどちらか

「サイレンサー」あるいは「サプレッサー」はアメリカでは軽機関銃などと同じ「Class 3」の中の「AOW(Any Other Weapon……その他の武器)」に分類されます。そのため登録したうえで毎年余計に納税しなければいけません。

ということは当然「銃声を抑えるあの部品に課税する」と書いた法律があるはずです。それに合わせればいいのでは……というわけで見てみましょう。銃器関連法案の中でも登録・課税対象を定義するNational Firearms Act(NFA)の項です。

National Firearms Act Definitions – Silencer

The term “Firearm Silencer” or “Firearm Muffler” means any device for silencing, muffling, or diminishing the report of a portable firearm, including any combination of parts, designed or redesigned, and intended for the use in assembling or fabricating a firearm silencer or firearm muffler, any part intended only for use in such assembly or fabrication.

(抄訳)「銃火器用サイレンサー」あるいは「銃火器用マフラー」とは携帯用火器を減音するあらゆる部品の組み合わせ、設計、機構を指す。

ごらんの通り、NFAの定義によれば、あくまでも法的に正式な名称は「サイレンサー」ないしは「マフラー」です。「サプレッサー」というのは通称にすぎません。

NFAは1930年代に成立した法律でこの頃はまだ「サプレッサー」という名称は一般的ではありませんでした。銃器設計者マキシムが初期のサイレンサー「マキシム・サイレンサー」を売り出したのが20世紀初めであり、そのためこの語が使われたのです。

というわけでNFAでは「サプレッサー」という名前は使われていない、ということになります。

ただし「登録者への注意」のような非公式な文章では「サプレッサー」や、その他の俗称(例:Muzzle Can……銃口の缶)もすべて網羅され登録漏れのないようになっています。結局は法的にも「まあどっちでも……」といえる状態です

珍説:日本語訳なら「サプレッサー」が正しい

英語なら英語同士で比較すべきであって、日本語に訳した時の表記によって英語表現が正しいかどうかを決める、というのは意味不明な話です。が、こういう理屈もあるようです。

サイレンサー=消音器
サプレッサー=減音器

だからサイレンサーはダメでサプレッサーが正しい。

まずサイレンサーもサプレッサーもいずれも「音を静めるもの」という意味であることは先に述べました。

「音を静めるもの」を「消音」と表現するのはどうか、という人は「消臭スプレー」や「消毒薬」についても考えてみてほしいところです。こういうのは「イチャモン」レベルのナンセンスな説であると言わざるを得ません。

珍説:内部のしくみや抑制性能で呼び方が変わる

サイレンサーとは内部が○○××になっているもの
サプレッサーは内部が△△になっている

だからサイレンサーの方が性能が高い

という人もときどき見かけます。これもNFAの項で説明したとおり「音が抑制される仕組みをもつものはなんでもサイレンサーorマフラー」でありしくみや性能で呼び方が変わるということはありません。等しく税金を取られます。

珍説:最近は○○という呼び方に変化してきている

確かに最近は「サプレッサー(Suppressor)」という表記が多いようですが、だからと言って古い方が間違っているわけではありません。「俺はサプレッサーと呼ぶことにするぜ!」というのは自由ですが、「サプレッサーに訂正してください!」はやめましょう。

まとめ

そういうわけで「サイレンサー」と「サプレッサー」のどちらが正しいのか?という問いについては「どっちも正しい」と言わざるを得ません。どちらも同じように通用する語です。また、日本語表記の「消音器」「減音器」についても、そこまで目くじらを立てるほどでもないように思います。好きなものを使えばいいでしょう。

「サイレンサー」と「サプレッサー」については非常に荒れやすい問題です。この記事を書くにあたってネット上の言説を色々と確認したのですが「~って聞いたことがある」「~というゲームでは~だった」「~だと思う」など、根拠はとても曖昧なのに非常に強い調子で批判している人がいることに改めて驚きました。こうした批判は無用なばかりか、議論の本質がぼやけてしまい有害にすらなります。

この記事が「サイレンサーって書いて怒られた……」とか「サプレッサーじゃないと絶対ダメ!」と言う人たちの心を解きほぐすことを願ってやみません。

トップ画像:ファイル:Suppressors.jpg – Wikipedia

関連記事

ほんとに音は消える?銃につけるサイレンサーの効果がよくわかる動画 - DNA

米海軍情報機関の調査員、約200倍の値段で軍に「サイレンサー」を購入させた容疑で調査 - DNA

妙な改造を施されたり密造されたりしたヘンテコな銃の画像いろいろ - DNA

特殊静音狙撃銃「VSS Vintorez」の実銃をフルスクラッチで作るプロジェクトがスタート - DNA

「スプリンターセル ブラックリスト」の銃声を録音しているメイキング動画 - DNA

銃口が跳ね上がらない幻の射撃競技用ピストル「MC-3」 - DNA

この記事をブックマーク/共有する


前後の記事

DNAをこれからもよろしくお願いします!

Facebook上のコメント一覧

Twitter上のコメント一覧