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米海軍特殊部隊ネイビー・シールズ(Navy Seals)はなぜ「ハイ・レディ」ポジションを多用するのか、シールズの現役少佐に直接聞いてみた


シールズの資料を見ていると、室内に突入する前、銃口をななめ上に向けて待機する「ハイ・レディ」ポジションを取っている写真が非常に多く見つかります。他の軍や警察の部隊も「ハイ・レディ」ポジションを使用している写真はあるのですが、シールズの資料では特に多いのです。これは一体なぜなのか。2013年2月2日にDVD・Blu-rayが発売になる映画「ネイビーシールズ(原題:Act Of Valor)」公開直前、主人公である現役隊員・ローク少佐に直接質問したところ、面白い答が返ってきました。

「ロー・レディ」と「ハイ・レディ」

部屋の中を制圧するべく突入する瞬間というのは危険がいっぱいです。「Room Entry」でYouTubeを検索すると山ほど練習動画が出てくるというほどで、なにしろ狭い間口を通るため集中攻撃をうけやすいことから、なるべく速くドアを通過しなければなりません。

また、スピードだけでなくチームの安全も考えなければなりません。突入のときにうっかりひっかけて銃が暴発したら……そしてその時銃口の先に味方がいたら……ギリギリの状況であるほど安全管理は大事になります。

そうすると短距離走と同じようにスタートのための準備の姿勢が大事になってきます。部隊ごとの文化やインストラクターによっていろいろあるのですが、今のところ大きくわけて2種類の待機姿勢があるのです。

それが「ロー・レディ(Low Ready)」と「ハイ・レディ(High Ready)」ポジション。

ハイ・レディでは銃床を脇の下にいれ、フロントサイトと目線が重なるように傾けて持ちます。こうすることで銃口は上を向くので安全。また銃口と前方を視野におさめることができるので周囲の動きが良く見えるというメリットがあります。そしてアメリカ海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」では、この「ハイ・レディ」ポジションをとっている写真を見かける頻度が他の部隊よりも非常に高いのです。

例えばこちらは入隊前の選抜訓練の動画
US Navy SEALS Qualification Training (SQT) – YouTube

銃口を上に掲げて走る姿。待機姿勢ではありませんがこのビジュアルは非常によく見かけます。

室内に突入する直前、銃口が上向き。

もちろんシールズが「ロー・レディ」を使っている資料もたくさんありますが、シールズといえば「ハイ・レディ」というくらいこの姿勢が多いのです。これは海外の射撃愛好家も気になっているところのようです。

例えば「seals high ready」で検索をかけてみると、様々な考察や体験談が見つかります。「ハイ・レディ」は銃を構えるとき重力で下ろせるのでより素早い、とか。走るときに有利だ、とか。「海軍由来のシールズでは、ボートの底に穴をあけないようにハイ・レディを採用している」とか。(ちなみにヘリに乗る時はエンジンを撃ちぬかないよう銃口は下向きにして運びます)

どれも説得力がある説であることは間違いありません。すべて正解なのだと思いますが、いまひとつ物足りない。本当の本当に現場の人たち、現役のシールズ隊員とそのインストラクター達が採用している理由はいったいなぜなのでしょうか?

映画「ネイビーシールズ」公開直前イベントで直接質問をぶつけてみることに決めたのです。

ティーチイン・イベントで投げかけられた質問

映画『ネイビーシールズ』オフ会と銘打ったこのイベント、2012年6月22日に東京・ギャガ会議室にて開催されました。ニコ生でも中継されましたが、質問と回答を再掲します。

映画に出演したことで何か変わったことはあるか

特にそうは思わない。私も他の隊員も前の生活に戻って以前どおりの仕事をしている。街で出会う人が時たま顔を知ってるというぐらいだね。大きくは変わっていない。

なぜこの映画に出演することになったのか?選ばれたきっかけは?

海軍のための短いCMムービーを撮影したことがきっかけで、そこから長編映画を作るプロジェクトが生まれた。その時スタッフが20~25人くらいの隊員にインタビューして、仕事の内容やマインドなんかを知って、どのハリウッドの俳優を使うのか考えていたんだね。それで俳優をシールズにするよりもシールズを俳優にするほうが簡単だと思いついたんだ。

それで何人かの隊員に声がかかったんだけど最初はみんな断った。でも半年後、「ネイビーシールズ」が、ただのアクション映画ではなくて、私たちが国や家族についてどう考えているかを描こうとするもっと大きな話になると知って、参加することにしたんだ。

トム・クランシー氏が監修に加わることになった経緯について

彼はまず愛国者であり、アメリカのことを深く考えている。そして素晴らしい知識量でもってアメリカ軍、特に海軍について小説にしている。彼は少し後からやってきたのだけど、それまでに完成した絵を見て、正統なアクションがあるからと参加を決めたんだ。ホンモノがいるから来てくれたんだと思う。

シールズの隊員が良く見るミリタリー映画は何?

多分みんなコメディが好きだと思う。任務の間の息抜きが欲しいし、自分の仕事に関しての映画を見るのはなかなか難しいものだ。例えば弁護士が裁判モノの映画を見たら「これは違う、こんな風にはやらない」と言うだろう。それと同じだ。

もちろん「プラトーン」や「プライベート・ライアン」「ブラックホーク・ダウン」みたいなものを楽しんでいる。あまり重箱の隅をつつくようなことをせずにね。色々なものを見ているよ。

それらの中で「完成度が高い」と思うものは?

完成度でいえばトム・ハンクスの映画がよいと思う。自分たちと違う時代の兵士の闘い方、世代による戦闘の変化は興味深い。自分たちシールズのルーツである「UDT(Underwater Demolition Team……水中破壊工作部隊)」も出てくるしね。彼らは浜辺の爆発物を除去して、上陸部隊を導くんだ。歴史を覗いているみたいだね。

パシフィック」など?

そうだね。それからイーストウッドの作品も好きだ。 「ネイビーシールズ」ではすべての射撃シーンで実弾を使っている。 マイケル・マンの映画も好きで「ヒート」や「コラテラル」などもいい。俳優に実際の銃の扱いをきちんと教えている。多くの映画ではリロードすらせずに撃ちまくるんだけど、そういうことをしないリアルな映画は好きだね。

コマンドー」はどう思うのか。ああいう人はいないと思うのだが。

私も同意見だ。水着で走り回って腰だめで銃を撃つのは見たことがない。

アメリカ陸軍が出したプロモーション用ゲーム「America’s Army」があるが、海軍ではそういうことをしないのか。

海軍全体の話と言うのは分からない。シールズは海軍の中のごく一部に過ぎないからね。少なくとも「ネイビーシールズ」は入隊募集の映画ではない。もちろんこれを見た熱意ある若者が後をついでくれれば素晴らしいことだけど。しかしゲームでリクルートするというキャンペーンについてはまだ聞いたことがない。

「Battlefield 3」とのタイアップは最初から計画されていたのか。BF3のプロモ映像に「ネイビーシールズ」のスタッフも参加しているが。

それは分からないが直接の関係はないと思う。ゲームの開発にはシナリオやらグラフィックやらで何年もかかると聞くしね。おそらくゲームのリアルさや特殊部隊が活躍するという内容が映画とマッチするからこの組み合わせになったのだろう。

こうしたリアルなFPSゲームについてシールズの隊員はどう見ているのか

隊内にこうしたゲームのプレイヤーはたくさんいて、海外派遣の時はよく遊んでいるようだ。チーム対抗のゲーム大会も行われているよ。私自身はあまりゲームをやらないけどグラフィックは驚くほどきれいだね。でもゲームはゲームだし特に批判することはないよ。

シミュレータのように感じることはある?

シミュレータは別にあって、現実的な訓練が行える。こうしたものよりゲームはよりフィクション性が強い。ゲームではライフがたくさんあるが、実際の任務ではひとつしかないしね。

演技は実に自然だったが、どれくらい練習したのか。

練習はまったくなかった。監督が演技することを嫌ったんだね。普段私たちが生活や作戦の中でやることをそのままやるように求められたんだ。演技しようとすると普段のままではいられないだろう。だからそういう訓練は受けていない。

セリフを覚えるのが大変だったのでは?

そうでもない。なぜなら普段の任務とほぼ同じことをやっているからね。だから台本通りのセリフを何度も繰り返すということもなかった。その場面でいったい何が起こっているのかをよく観察して、実際にそういうことがあったらこうするだろう 、ということを言ったりやったりするんだ。アドリブもすこしあるよ。

相棒役の人はいつもあんな感じ?

そうだね。彼は社交的でおしゃべりで求心力のあるやつなんだ。

例えばカメラマンが射線に入ってしまった時に照準を外してしまったり、カット前にセイフティをかけてしまって編集がつながらなくなったりといった、実銃を扱い慣れている人たちならではの失敗談があれば

映画作りですごいのは同じシーンを何度も同じように撮影することだ。例えばターゲットを撃つシーンでは実際には20、30回やってあらゆるアングルからそれを撮影している。これは私たちにもよいトレーニングになった。ボロボロの訓練用じゃなくて何百万ドルもするようなクルーザーを何度も襲撃するなんてことは普段ないからね。様々な乗り物で訓練するいい機会だったと思う。

また何度も同じシーンをやっているが、カット前の問題は起きなかった。銃の取り扱いは同じシチュエーションならまったく同じだ。仕事が仕事だけに、そういうことはごく当たり前にできる。

隊員は様々な装備品を使っているが、私物と支給品の割合はどうか。また愛用しているのはなにか。

いままで使ったことがあるのは海軍からの支給品だけだ。自分で買いたしたことはないよ。いろいろなものがそろっているのは特殊部隊の特権だね。トップブランドが作っている新しい装備もしょっちゅうテストしていた。

愛用していたのはハンモックだね。飛行中の輸送機の中でよく昼寝したもんだよ。

MRE(携帯用食料、レーション)では一番好きなメニューは何か。

かれこれ5~6年くらい食べていないんだ。もっといいものを食べる方法を学んだからね。もし食べるならChili and Macaroni(10番)がいい。

BUDS(基礎水中爆破訓練)の期間中にズルはした?

無理だ。真冬の凍るような水の中ではズルをする方法なんかない。

お給料について。シールズでいくらくらいもらえるのか。

十分というわけではないがそのために戦うわけではない。普通の人は金額の多少をベースにした評価だが、私たちは戦士としての評価やチームメイトとの絆が大事だ。金額の多少では評価できない。

顔を出しても大丈夫なのか

今この瞬間にも世界中で作戦が行われて、様々なメディアに露出している。それゆえに映画は正確に作るべきだと思う。この映画に参加した理由の一つだよ。

それに追われている者のほうが恐怖を感じているはずだ。

一番印象にのこった作戦は何か

特定の作戦について語ることは許されていない。この映画は実際の作戦やシールズの歴史をもとに作られている。

私のチームはあらゆるミッションに参加してきたが、特にイラクの子ども達を人間の盾に使って爆弾をしかけたテロリストが印象に残っている。彼らを救い、普段の暮らしに帰すことができた。

今後、さらに映画に出たり本を書いたりする予定はあるか。

こうした映画はもう撮影されないだろう。海軍や国防総省が許可を出すとは思えない。個人的には本は書きたい。作戦についてではなくトレーニング方法やチームメイトのことやなんかを書きたいね。

自衛隊と訓練をしたことは?

他の国の人とはあるが、この国のいかなる部隊とも訓練はしたことがない。

本題:なぜシールズでは「ハイレディ」ポジションなのか

最後の最後、少しだけ少佐を捕まえてお話ができたので、直接質問をぶつけてみました。

なぜシールズでは「ハイ・レディ」ポジションなのか

もちろん「ロー・レディ」ポジションも使用する。これは突入のその後、どういう動きをとるかによって使い分ける。だから「ハイ・レディ」ポジションだけということはないんだ。

でも最初は「ハイ・レディ」を使用するように教える。まず銃口の向きの管理がしやすいこと、それから銃に隠れることでシールドとして使えるからだ。それを基礎として「ロー・レディ」を学ぶんだ。
 
 
 
……ということで、「ハイ・レディ」を最初に学びその後の基礎としているので、資料では「ハイ・レディ」を見かけることが多い、というのが答なのでした。

映画では「ハイ・レディ」で突入しているところを、ジャングルのアジトで人質奪還作戦を行うシーンや、クルーザーに急襲をかけるシーンなどで確認できます。同じシーンで「ロー・レディ」も織り交ぜて使っているので、使い分けに注目してみると新たな発見があるのかもしれません。DVD・Blu-rayは2013年2月2日に発売。ぜひもう一度自宅のテレビで確認してみると面白いのではないでしょうか。

Act Of Valor (2012) Official Trailer – HD Movie – Navy SEALS – YouTube

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