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フォロアー1万7千人を連れて退職した職業ブロガーが元の職場に訴えられる


企業がTwitterなどのソーシャルネットワーク上で公式アカウントを開設し、ユニークな発言で広報活動を行う例が増えてきました。ここで問題となるのは公式アカウントにつくフォロアー達の存在。彼らは企業につくのでしょうか、それとも「中の人」につくのでしょうか。アメリカで少し考えさせられる問題が発生しているようです。


カリフォルニア州・オークランドに住むノア・クラヴィッツ氏は、携帯電話情報サイト「PhoneDog」の元ライター。在職していた4年の間に商品レビューを執筆する一方、同サイトのライターアカウント「Phonedog_Noah」も運用し、約1万7千のフォロアーに向かって情報を発信していました。

退職後はアカウント名を「NoahKravitz」に改名して運用を継続。もちろん事前に「時々投稿してくれるならアカウントを保有していてもいい」という約束は交わしていたのですが、それにも関わらず8ヵ月もしてから突然「Twitterのフォロアー一覧は顧客リストであり、この8ヶ月で1人あたり月2ドル50セント、しめて34万ドルの損害が発生した」と訴えられてしまいました。
Noah Kravitz

PhoneDogの広報担当者はニューヨークタイムズの取材に対し「フォロアーやファン、ブランドイメージの向上のためにPhoneDogがつぎ込んだコストは非常に大きなもので、これによって得られたものはPhoneDogMediaの所有物と考えている。私達は、顧客リストや機密情報、知的財産、トレードマークや商標を守るため積極的に行動します」とコメント。これに対しクラヴィッツ氏は「訴訟は共同経営者、そしてブロガーとしてPhoneDogに広告売り上げのうち15%支払うよう要求していたことに対する報復ではないか」としています。

知的財産権に詳しいニューヨークの弁護士、ヘンリー・シトン氏は「これは、ソーシャルアカウントの所有権に関するオンラインの世界での先例となるでしょう。裁判官が、メディアにとってのフォロアーの価値をどのように設定するか興味深い」と言及した上で「PhoneDogの読者に耳を傾け、新しい顧客を開拓するためのアカウントなら、(フォロアーは)PhoneDogのものになります。しかし問題を複雑にしているのは、クラヴィッツ氏はTwitterアカウントを運用するためだけに雇用契約を結んだわけではない点です」と、判断の困難さを指摘しました。

こうした個人を押し出すメディアを広報に使用する場合、その成果というのは企業が生み出すものなのか、それとも「中の人」が生み出すのか非常に曖昧になります。例えばNHKの「NHK広報局」やロイヤルホストの「ロイホたん」などは人気の源泉が「公式」の看板にあるのか、それとも「中の人」の個性にあるのかは判然としません。こうした広報の成果によって得られた利益を全て企業のものとするのは、少し違和感を感じます。

似た事例では、社員が取得した特許は誰のものかという「職務発明」があり、しばしばその対価を巡って訴訟が提起されています。いわゆる「青色LED訴訟」では発明者の訴えが認められ、企業は約8億円を支払うよう命じられました。

ニュースサイト界隈でも、多くのライターがプロフィールに個人アカウントを記載していますが「フォロアーは誰のものか」問題についてはっきりとさせている例は無いように思います。利益やブランド力、要するにお金が絡むこともあり、遅かれ早かれ日本でも問題になるのではないでしょうか。

ソース:Lawsuit May Determine Who Owns a Twitter Account – NYTimes.com

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