科学と技術

既に80万冊を「執筆」、書籍を自動で生成しAmazonで販売するプログラムが稼働中


AmazonとGoogleによって膨大な種類の商品を少量ずつ長期に渡って売る「ロングテール」という手法が現実のものとなって久しいのですが、これをさらに推し進めた研究者がいます。なんと80万冊もの本を「自動執筆」し、これをAmazonで販売するというシステムが稼働しているのです。


INSEAD大学院大学・ビジネススクールのフィリップ・パーカー経営学教授がこの10年間取り組んでいるシステムは、専門家・研究者の思考方法をもとにしたアルゴリズムを用いて任意のトピックに関する本を20分で書き上げることが可能です。

さらに、その本を様々なフォーマットにレイアウトしなおすことで即座にAmazon.comで販売することができます。在庫は電子書籍やプリント・オン・デマンドなので保管費用がかかりません。

システムを構成するのは「あるトピックに関する情報源のデータベース」「そこから情報を抜き出すクエリ」「情報を流し込むひな形」の3つ。これを基本に、例えば著作権違反防止のための重複文検出アルゴリズムなどの補助プログラムが組み込まれています。

自動生成においては、まず「何を調べたいのか」を入力。例では「2008年から2013年の抗精神病薬市場について」ですが人間が入力すべきデータはごくごく少量です。
Patent on “Long Tail” for automated content authorship. – YouTube

「ある技術の市場動向」や「特定の疾病に関する事例データ」など、書籍というのはターゲットを絞れば絞るほど単価は上がりますがニーズが少なくなっていきます。なので、普通の出版社では採算割れしてしまい、こうした本を制作することはできません。

パーカー教授のシステムではほぼノーコストでそうした書籍を制作できます。また、キーワードさえあれば書籍を作ることができるので、例えば検索エンジンでよく検索されるワードを逐一採集してシステムに流し込めば流行に即した書籍が本屋に並びます。

パーカー教授と彼の会社の名義の本合わせて既に約80万冊が書き上げられ売られています。1日にこのうち0.1%が1冊ずつ売れるとしても800冊。単価が1000円とすれば80万円という売り上げが毎日入ってきます。

また、パーカー教授は自分の書籍を売るだけでなくこのシステム自体を出版社やメディアが導入できるようEdgeMaven社を設立しています。

コンテンツというのは大量にあればあるほど「ひっかけ」やすくなるのですが、人間が手作りするのではどうしてもコストがかかります。しかし、そうしたコンテンツというのは定型化できるものが少なくありません。例えば警察や企業の発表から作られる新聞記事は4W1Hを並べた定型的なものになりがちなので十分に自動化できるそうです。

EdgeMaven社は実績としてコンサルタント企業のリサーチ報告書や論文の自動生成や、ビジネススクールの授業で使われるケーススタディ、PC・PDA向けの教育ソフトや辞書ソフトを挙げています。

さらにパーカー教授は書籍だけでなく映画やゲームもこのシステムを使えば制作できると言います。台本と用意されたキャラクターを動かすスクリプトを生成すれば、簡単な動画を量産することがができます。例の動画ではフリードメインの辞書のデータと、テキスト・スピーチ変換を用いて「1日1語覚える英会話」的な動画コンテンツを大量に作っていました。

今のところこのシステムはデータを集めてまとめるタイプのコンテンツに力を発揮するようですが、次のターゲットは「恋愛小説」とのこと。恋愛という人間の本能に絡む題材を扱う以上、どうしても類似性が生まれてくるので定型化しやすいそうです。そして大体同じような話の展開にも関わらず市場的価値は非常に高いので狙い目なのだとか。

これはSFでもなんでもなく、「既にやって来た未来」です。ロシアでは2008年に自動生成された恋愛小説「真実の愛」が出版されていますし、日本ではそれよりも前、20世紀の末に官能小説を自動生成するソフト「七度文庫」が生まれており、これを原作とした成人向けコミックスが電子書籍として販売されています。

こうした時代にコンテンツの価値をどう測定すればいいのか。単に「手作り」であることに価値を見出していいのか。文筆業は何度も淘汰の波をかぶっていますが、今度の波は相当大きそうです。

ソース:Patented Book Writing System Creates, Sells Hundreds Of Thousands Of Books On Amazon | Singularity Hub

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