科学と技術

スミソニアン博物館の全収蔵品1億4千万点が3Dデータになるかもしれない


表に出ているのは1億4千万点もある全コレクションのうちのたった2%とも言われるアメリカのスミソニアン博物館。この膨大な収蔵品を、すべて3Dスキャンして保存できないか……という壮大な計画のテストが進行しているそうです。


スミソニアン博物館は、ワシントンD.C.とその周辺に位置する総合博物館・研究施設。その規模は文字通り古今東西からありとあらゆるものが集められたすさまじいものであるにも関わらず、入場料は一切タダ。

表に出してあるものを見て回るだけでも1週間はゆうにかかりますが、これが全ての収蔵品となるとまず倉庫から出してくるのが一苦労。そこで高解像度の3Dデータに起こしてしまえば、いつでも見ることができるようになります。

3D化は現在パイロット版の小規模なプロジェクトとして、ごく少量の収蔵物に対して行われているのみですが、もし本格稼働すれば面白いことになりそう。例えばこれはヴァージニア州のトーマス・ジェファーソン博物館から企画展示のために借り出されてきた銅像。スミソニアンに運び込まれた後、ミノルタ製の10万ドルのスキャナで走査し、クラウドベースのレンダラでデジタイズしたものを3Dプリンタにかけた超精密レプリカです。こうした貸し借りもスムーズになります。

博物館はただ物が置いてあるだけではなく、ある一定のメッセージ性をもって収蔵物が並べられている学習の場でもあります。様々な収蔵品がこうした形で表に出ることで、収蔵物が今までとはまったく違うストーリーを語りだすという変革も期待できます。

今のところマンパワーの不足と、技術の進歩が早過ぎてすぐに陳腐化するソフトウェアが問題だそうですが、将来的にはすべての収蔵品を3Dデータ化したい、とのことです。

すべての収蔵品、ということは当然航空宇宙部門も含まれるはず。初めて空を飛んだライトフライヤーにはじまり、零戦、X-1音速飛行実験機やアポロのカプセル、コンコルド……考えるだけでもよだれが出そう。3Dプリンタで実物大のレプリカを出力して庭に置く……というのも夢物語ではありません。

終戦後、アメリカに運ばれたものの、なかなか表に出てこない旧軍の戦闘機「震電」なんか人気が出るのではないでしょうか。

ソース:Smithsonian turns to 3D to bring collection to the world | Geek Gestalt – CNET News

トップ画像:Steven F. Udvar-Hazy Center: Air France Concorde | Flickr – Photo Sharing!

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